Research Abstract |
平成9年,10年度にわたり,(1) 骨髄移植(造血細胞移植:以下移植)を終えた,こどもと家族の移植後の生活の実際と,移植に対する思いを明らかにする,(2) 移植後の生活や移植に対する思いに影響を与えている要因を明らかにする,ことを目的に調査を行い,得られた結果より,移植を待つこどもと家族の心理社会的準備に対する看護援助を考察した. 【調査対象】移植後2年以内で,身体状況は問わず,現在小児専門病院外来通院中のこども5名とその親12名(母親8名,父親4名).ALLの再発例が5名,APLの再発1名,染色体異常を伴うALL2名,重症再生不良性貧血1名,こどもの移植時の年齢は,1.3歳〜19.1歳(平均9.0歳),10歳以上のこどもでは,本人からも調査を行った.移植のタイプは,血縁者間移植5名,非血縁者間移植4名で,調査時,4名が慢性GVHDの診断を受けていた. 【結果】今回対象となったこどもは全員が,移植を行うことについて,医師や親から説明を受け,不安や迷いの中,こども自身で決定を行ったと述べた.また,移植直後の身体的苦痛については,医師や看護婦から具体的に説明を受け,こども達は,移植前から十分にイメージができていた.しかし,移植後は,全員が全く普通になる,病気はすっかり治ると,移植前にはイメージしていたが,自身が抱いていたイメージと異なると述べたものが2名いた.この2名は,現在の生活の満足度が低く,「移植をしなければよかった」「こんなはずではなかった」と,移植を受けたことを否定的に捉えており,移植前に移植後の生活について,知っておきたかったと述べていた。移植前に,自ら移植に関する情報を得たり,医師や看護婦に質問をした親や,移植前から夫婦でよく話し合い,夫婦で統一した意志決定を行っていた親は,移植に対する不安はなかったと述べた.逆に,移植を怖いものと捉え,情報を得ようとせず,移植を受けることを迷っていた親は,不安が強く,移植後の移植に対する思いも否定的なものが多かった.ほとんどの親が,移植してよかったと述べ,現在は,晩期障害や再発への不安な思いを押しやり,生活の充実を望んでいた. 【考察・看護への示唆】移植後の実体験と移植前にイメージしていたものが異なると感じているこどもは,移植に対する思いも否定的となり,生活の満足度が低いことがわかった.こどもの移植に対する思いを,短期的なもののみでなく,退院後の生後の生活を含めた長期的な視点で捉え,移植後のイメージをより具体化し,実際との相違を少なくするような心理的準備への看護介入が必要である.また,移植での体験がこどもに与える影響を考え,移植後の患児の生活が,充実したものとなるよう継続した看護援助が求められる.同様に,親の移植に対する思いを把握し,夫婦間で統一した意志決定を行い,予斯的不安を乗り越え,前向きに移植に臨めるように親への援助が必要である. 本研究の一部は,第30回国際小児がん学会,第21回日本造血細胞移植学会に発表し,今後は,5月にFinlandで行われるInternational Family Nuring Research Congressで発表予定である.
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