Research Abstract |
・ 今回は,昨年度の研究成果をうけて,事例地域での実証を研究の中心とした。 ・ 事例地区は,岡山県の新見地方(新見市と大佐町,神郷町,哲多町,哲西町からなる)であり,様々な経済指標からみて県内においては最も周辺性が強い地域である。ここでは,1960年代後半から電気機器,衣服といった労働力指向型の工業立地がみられ,1970年代を通じて雇用を拡大し続けた。ところが,両工業ともに1980年代より従業者数が急減少しており,地域の雇用の柱であった製造業雇用に大きな変化が現れた。 ・ その要因を明らかにするために,まず,地域の側の変化を捉えた。そこでは,人口の高齢化と人口の減少が深刻であり,これに進学率の上昇が加わって域内の生産年齢人口が絶対的にも相対的にも減少していること,サービス業の成長やアクセシビリティの改善により職業の選択幅が増えていることが明らかになった。・ ついで,立地工場にインタビュー調査を実施し,以下の諸点が明らかになった。衣服工場は,いわゆるバブル経済期に従業者数を増やしたタイプと,それに係わらず一貫して減少しているタイプに二分できた。前者の場合,様々な追加投資をしており,またそれができるだけの経営規模があった。後者は,概して小規模で,追加投資が余りなされてい反かった。そして,バブル期に仕事の依頼が増えても,人手不足でそれを受けられず,またバブル後の不況期には絶対的な仕事量が不足し,従業員数が減っている。 ・ 電気機器工業では,自動車の電装部品企業の分工場が1960年代に設立され,以後これに関連した下請け工場の設立が相次ぎ,域内ではこのグループの生産連関が重要である。分工場では,設計・開発部門を併設しここに男子労働力が配置されているが,製造部門では女子主体である。下請け工場は,女子主体の雇用構造である。分工場の場合,近年従業者数は一定水準で推移しているが,下請け工場はバブル時をピークに従業者数は急激に減少している。 ・ 衣服,電気ともに,汎用的な生産は海外に向かっており,国内では質を追求した生産に特化することが,生き残り策となっている。
|