Project/Area Number |
09780124
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Human geography
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Research Institution | Kanazawa University (1998) Oita University (1997) |
Principal Investigator |
中島 弘二 金沢大学, 文学部, 助教授 (90217703)
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Project Period (FY) |
1997 – 1998
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1998: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 森 / 国土緑化運動 / 自然 / 表象 / 国民国家 / ネーション / みどり / 風景 / 言説 / 全国植樹祭 / 緑化 / 天皇制 |
Research Abstract |
本年度も昨年度に引き続き戦後日本の国土緑化運動の実態と緑化思想の形成過程を明らかにしてきた。本年度は、戦後の国土緑化運動の過程で生み出された「森林公園」や「国民の森」などのさまざまな「森」の形成過程と、そうした「森」をめぐる緑化運度の言説の分析を通して、戦後日本の国土緑化運動における「自然」と「ネーション」とのつながりに関して一定の知見を得ることができた。 1960〜1970年代の国土緑化運動は、山地の荒廃林野への植林や拡造林を主体とした1950年代の緑化運動と異なり、都市における環境緑化や自然保護・環境保全などへの取り組みもおこなわれるようになってきた。そうした背景のもと1968年に「明治百年記念国土緑化運度」が展開され、その一貫として記念造林運動や「明治の森」「国民の森」「県民の森」、「森林公園」などの造成が相次いでなされた。その後も「昭和の森」や「日本の森」「世界の森」などが相次いで造成された。これらの「森」の多くはその名前に示されるように、特定のナショナルアイデンティティやローカルアイデンティティと結びついたものが多い。毎年開催される全国植樹祭や全国育樹祭もほとんどの場合こうした「森」を会場としており、これらの「森」がいわば「国民国家」の表象の場となっていたことがわかる。 さらにこれらの「森」はそのほとんどが林業振興のためというよりも、都市住民のレクレーションや保養のために作られたり指定されたものである。そこでは森林でのレクレーションや保養を通じて都市生活で失われた「人間性」を回復することが大きな目的とされた。しかし重要な点は、ここでいう「人間性」とは普遍的なものではなく、健全な精神と肉体を備えた「国民」や「県民」「市民」であったという点である。すなわち「森」は単に国民国家の表象の場であるだけでなく、レクレーションや保養など自然の消費を通じた国家国民の主体の形成の場ともなっていたのである。
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