Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 1998: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
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Research Abstract |
随意的な運動制御を行なう際,脳が視覚情報をいかに利用しているかを明らかにするため,昨年度に引き続き,「お手玉」を題材として心理実験を行なった.研究期間中種々の実験を行なったが,ここでは,視覚情報の制限が玉を受け取る手(以下受け手と呼ぶ)の運動制御に与える影響を計測した実験について報告する. まず,玉の軌道頂点前後の視覚情報を奪うと,受けての位置誤差(受け取る際の玉と手の中心のずれ)は若干増大した.また,単眼視の状態でお手玉を行なうと,受け手の誤差が奥行き方向に大きく増大することがわかった.この結果は,玉の軌道を推定する上で両眼視に基づく奥行き情報が重要であることを示している. このような受け手に対する影響は,空間的な誤差だけでなく時間的な誤差という形でも現れた.すなわち,視覚情報を制限することにより玉をつかむ動作のタイミングが不正確になる傾向が見られた.このことは,脳が,運動指令を決定する上で,空間的情報だけでなく時間的情報も視覚を通じて獲得していることを示唆する. さらに,受け手の位置誤差の時間的変化を分析したところ,誤差はしばらくの間一定の範囲で保たれているが,何らかの原因でいったん増加し始めるとますます増加し,その結果お手玉が中断されてしまうことがわかった.以上の結果は,1)脳は通常,遠心性コピーや投げ手が感じる反力などに基づいて玉の軌道を予測することにより,視覚情報に頼らずに受け手への運動指令を定めている,2)玉の投げ上げや軌道予測がうまくいかない場合は,視覚を通じて玉を観測して軌道推定をやり直す,3)この時点で視覚情報が与えれられないと,軌道推定に傷害が生じ,受け手への運動指令を修正できなくなる,と解釈することができる.このことから,運動制御において,視覚は予測を補完する役割を果たしている,逆に言えば,脳は必要なときのみ視覚情報を参照しているといえる. 本研究では,運動制御における能動的観測メカニズムの一端をつかむことができたが,その詳細を解明するには,3次元位置計測装置や精密眼球運動測定装置を用いて人間の振舞いをより精確に計測することが必要である.
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