Research Abstract |
本年度における本研究の目的は,情報構造分析の結果と人間の発想や判断との相関を分析し,開発環境における要求分析過程の計算機支援方式について検討と開発を行うことにより,ソフトウェアの要求分析工程の計算機支援を実現することであった. 昨年度までの研究成果に基づき,本年度は,要求分析過程の計算機支援実現の一方式として,意味情報を忠実に表現し,管理することのできるソフトウェアリポジトリの構築を行い,その有効性について検討をした.具体的には次に述べる項目について研究成果を得た. 昨年度までの成果である,コミュニティにおける情報共有のためのデータ構造に基づき,要求分析支援の基礎となる情報構造を決定した.この情報構造では,要求分析過程において生産されるプロダクトを,構造面,制約面という二つの意味的なモジュールに基づいて記述する方式を採用している.構造記述は実体関連モデルに基づき,分析対象とそれらの関係を示すものであり,制約記述は,実体や関連の間の意味的な関係を初等的な集合論に基づいて記述するものである. さらに,この情報構造記述の意味的モジュール性を保存したまま管理することのできるリポジトリシステムの構築を行った.このリポジトリシステムを用いることにより,構造記述に対して制約記述をプラガブルに入れ換えるなど,要求分析過程においてしばしば行われる,情報モデルの改変にも柔軟に対応することができる.つまり,このリポジトリシステムが要求分析過程を支援するCASEツールの共通的なプラットフォームとして有効であるといえる. また,本研究の有効性を検証するため,リポジトリシステム上にユニバーサルグラフエディタを構築した.これは,編集対象であるグラフの構成要素とそれらの間の制約を前述の情報構造記述として与えることにより,さまざまな種類のグラフを編集可能とするものである.これにより,グラフエディタというソフトウェアに対する要求に,リポジトリシステムが柔軟に対応できることが示されたといえる.
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