グラム染色性を指標とした天然細菌群集の特性解析に関する研究
Project/Area Number |
09780475
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Environmental dynamic analysis
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 希 筑波大学, 生物科学系, 助手 (90251016)
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Project Period (FY) |
1997 – 1998
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 1998: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Keywords | グラム染色 / 天然細菌群集 / 光学測定 / 画像解析 / 付着性細菌 |
Research Abstract |
グラム染色性を指標とした物質循環にかかわる天然細菌群集の代謝生理的特性の解析を確立するためには、栄養状態の異なる系から採集した天然細菌群集についてのグラム染色特性の比較検討が必要である.河川は流域に応じてさまざまな栄養状態を持つという点でその様な系の候補であるが、他河川からの流入や流出、また土壌との相互作用もあり、細菌群集の栄養特性が変化したのか外来的要因によって細菌群集の構成そのものが変化したのかのを慎重に吟味する必要がある.Gradostatに代表される半開放定常実験生態系においてさえも種構成の変化を考慮する必要性が示唆されており、より限定された天然環境での検討が必要である.そこで、バクテリオプランクトンに比べ外部要因による細菌群集構成変化が少ないと予想される付着性細菌系を選び、グラム染色特性解析の適用を検討した.固体基板上では周囲の水環境と栄養状態が異なるといわれており、栄養状態の異なる系への細菌の応答が解析できると期待される. 1998年8月20日から21日にわたり、下田市鍋田湾にある筑波大学下田臨海実験センターのいけすを利用して細菌の付着実験を行なった.あらかじめ洗浄の上加熱処理によって有機物を除去したスライドグラスをスライドグラスホルダによって円筒型の篭の内部に固定したものを湾内の海面直下および水深5mに設置、一定時間毎にスライドグラスを回収しておだやかな洗浄によって非付着性生物を除去したのちホルマリンで固定、濾過濃縮グラム染色法と同様の染色時間でグラム染色を行なった.ガラス基板に付着した細菌の直接染色の場合、濾過濃縮グラム染色法と異なり封入剤によるメンブレンフィルターの透明化が必要ないため、常用の市販油浸レンズ用オイルを封入剤として用いた.このため染色自体は濾過濃縮グラム染色法よりも安定であったが、均一な染色が困難であり、定量的解析を行うには比較的広い面積を持つ基板の染色方法を更に検討する必要があることがわかった. ガラス基板への細菌の付着は均一ではなく、パッチ状の付着が見られた.ほとんどがグラム陰性であったが、まれにグラム陽性を示すパッチも観察された.これが染色性の不均一によるものであるかどうかは今後検討すべき課題である.興味深いことに、水深5mに設置したガラス基板では細菌だけでなく球形真核生物細胞(植物プランクトンないし大型藻類の遊走子)が付着し、その細胞表面にグラム陽性細菌が付着しているのが観察された.真核生物細胞の表面が水塊やガラス基板とは異なる栄養状態を持つことは容易に推察できることであり、グラム染色性が環境の栄養状態の指標となり得るという事を示唆している.今後、染色法の検討を重ねるとともに、分子生物学的手法を併用して群集構成の変化と生理状態の変化を同時に解析できる様にし、実験室系を利用した精密化などを行なってゆく必要がある.
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)