Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本研究が対象としている赤血球代替物は、高濃度のヘモグロビン(Hb)をリン脂質二分子膜にて包んだHb小胞体とヘム誘導体であるリピドヘムをリン脂質二分子膜に包埋させたリピドヘム小胞体である.両系ともヘムの自動酸化(メト化)により2価から3価に酸化されるため酸素運搬体としての能力を失う.還元剤を予め系中に共存させても還元剤自身の失活(自動酸化)により効果が無いばかりか、活性酸素により逆効果を与える場合があるので課題となっていた.脂溶性であるユビキノンを電子媒体として二分子膜中に導入し、外水相に添加したNADHから膜を介した電子移動により、メトHb還元について検討したが効率は低いものであった.電子移動媒体として水溶性メチレンブルーを用いた処、NADHからの電子を受けて脂溶性のロイコメチレンブルーとなり膜に溶解し、これが内水相のメトHb還元のための効果的電子移動経路の構築となった.リピドヘム小胞体のヘミン還元の場合、リピドヘムと同構造の亜鉛リピドポルフィリンが、電子受容体(キノン類)との電子移動の基礎解析を均一系で実施.アルキル鎖長と量子収率、蛍光励起寿命、電子移動過程は大きな相関がある.次いで二分子膜中に導入した亜鉛リピドポルフィリンからメチルビオローゲン(MB)への光電子移動過程を測定.親水部からポルフィリン環までの距離がリン脂質のアシル基鎖長より長い系では、外水相添加よりも内水相添加のMBの方が電子移動速度が大きくなるので二分子膜中におけるポルフィリン環の位置と電子移動に関する知見が得られた.以上から今後のリピドヘム小胞体の還元に大きく寄与することが明かとなった.
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