1790年代から1880年代のアメリカ合衆国における太平洋像の変遷
Project/Area Number |
09871063
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
History of Europe and America
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 泰生 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (50194048)
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Project Period (FY) |
1997 – 1999
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1999)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1999: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1998: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 太平洋 / 環太平洋 / 合衆国海軍 / ハーマン・メルヴィル / 『白鯨』 / フロンティア / 帝国主義 / 詩 / ハワイ / グルーゼンシュテルン / ガリー・オキヒロ / サルキソフ・コンスタンチン / フィリピン / 太平洋博覧会 / キャプテン・フック / 捕鯨 / 海洋学 / チャールズ・ウィルクス / ヘンリー・ワ-ズ・ロングフェロウ |
Research Abstract |
本年度は三ヵ年計画の最終年度にあたるため、資料の整理・購読を続けつつ、今までに得られた知見をどのような大きな歴史理解に纏め上げられるかを考察の中心におき研究を行った。現在「太平洋」の概念を論ずる際に大きな問題となっているのは、広大な大洋を挟んだアメリカ・アジア地域を統制する世界観をその政治性を隠蔽しつつ言い換える言葉として「太平洋地域」という言葉を用いるのか、それとも、そこに実際に住まう沿岸アジアの諸民族、島嶼諸国の人々の生活までを取り込みつつ「太平洋地域」という言葉を用いるのかという点であろう。これは、19世紀初頭の海図の作成に始まる太平洋の空間把握を主導した合衆国の太平洋像を現在もおよそ受け入れるのか、その地域における現実の歴史的アクターであったアジア太平洋の諸民族の存在こそを太平洋像の中身として把握するかという現代的な問題にも通じる問いである。ただ、私にはこの問いへの断定的な答えはまだない。 例えば合衆国海軍や19世紀のアメリカの詩人達は、必ずしも「支配」 「略奪」などの20世紀の帝国主義に通ずる姿勢だけから太平洋への空間意識を育てたわけではない。むしろ「太平洋」は、急激な大陸国家化、産業国家化を押し進める合衆国国内におけるフロンティア的想像力の閉塞感を開放する場として19世紀のアメリカ人の胸に育った社会文化的空間だったようである。その最も優れた表象はハーマン・メルヴィルの古典『白鯨』(1851)に含まれる「太平洋」と題された章にある。西洋の古典を踏まえた善悪の哲学を含む象徴的作品として文学史上に名高いこの作品も、アメリカ人の空間意識の拡大という文脈で太平洋研究の一部に取り込むことでより歴史的文脈に合った解釈を手に入れることができる。もちろん今後の考察を進める上で重要なのは、この合衆国の動きにあたかも空間の相対的位置感覚を刺激されたかのごとくに、日本でも19世紀の後半から社会文化的空間像が太平洋に関し生れていく事であろう。 その全体像はまだ明らかでないが、上の考察に資料的裏付けを増したものを、6月3〜4日の日本アメリカ学会、および、7月19〜24日のドイツ・グライフスヴァルト大学における国際会議"Historicizing Oceans"で発表する予定である。そのために3月末には、合衆国のボストンを訪れ研究者と最終的な意見の交換を行う計画である。
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Report
(3 results)
Research Products
(4 results)