Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
非平衡統計力学にもとづいた量子通信チャンネル理論を用い,新たな量子暗号系を開発することを目的とした研究を行った.信号の伝達は,いわば決定論的に行うことができ,かつ,盗聴行為が伝達の結果に影響を及ぼす系の開発をめざしている.具体的には,スクイズド光を用いた量子暗号系を開発中である. 定式化の概要は次のようなものである:まず,入出力端子を各々2つ持つ量子通信チャンネルを考える.具体的には,Mach-Zehender干渉計を用いて通信を行うものとする.Mach-Zehender干渉計は,2つのビームスプリッタと2つの移相器で構成され,構成要素の各々が2入力・2出力の素子となっている.この入力端子に,1モードのボソンの消滅演算子で表される光が入射したとしよう.入力信号が素子を通過することによって変換され,2方向に出力される際の演算子に対する入出力関係は,簡単な変換行列によって記述される.この変換規則は,素子が4端子回路網のような作用をすることを想起させるものとなっている.のみならず,2方向からの入力演算子を組み合わせて,シュヴィンガーボソンを持ち込めば,信号の伝達過程をスピンの回転とみなすことができる.このスピンの回転演算子を用いれば,入力光の状態と出力光の状態との間の関係をも記述できる.そこで,Mach-Zehender干渉計の入出力関係は,理論的にはスピンの回転操作に対応するのである.以上の理論的枠組みを量子暗号系を開発する際の基本的な要素とする. 上記の枠組みの中では,入出力光の状態はレーザー光のようなコヒーレント状態にあるものとしている.これは,位相空間では,等方的な不確定性を持つ状態である.しかし,位相空間における一方向の不確定性を犠牲にして,もう片方の不確定性を縮小した,スクイズド光と呼ばれる光が考案されている.スクイズド光発生装置も多数開発され,重力波検出装置への摘要も提案されている.新たな量子暗号系を開発するにあたり,上述の枠組みをスクイズド光も取り扱うことのできる形への拡張を行っている.
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