Research Abstract |
無酸素中でも成長できる水生植物として,イネ(Oryza sativa),ウリカワ(Saggitaria pygmaea)とヒルムシロ(Potamogeton pygmaea)の三種類について,その嫌気耐性機構の解明を目指した。 1,イネ幼葉鞘,ウリカワ塊茎,ヒルムシロ殖芽は,無酸素中で各々5日,6日,そして10日以上成長を継続した。0.8以上のエネルギー充足率が保たれたのは,イネ幼葉鞘では2日間と短いが,ウリカワ,ヒルムシロでは10日以上に及び,後二者の全アデニレイト含量も高く保たれ,無酸素中での極めて活発な代謝活性の維持機構の存在が示唆された。 2,ウリカワに^<14>C-Glcを投与し,その代謝産物を二次元薄層クロマトグラフィーで解析した。アラニン合成の活性化と,未同定のアミノ酸と有機酸数種へのラベルの取り込みの増大が無酸素中で認められた。無酸素中ではアルコール生産が活性化されるにも拘わらず,二酸化炭素へのラベルの取り込み増大が認められない。これらの結果から,無酸素での活発な代謝には,補充経路の活性化と,ケト酸によるアミノ酸合成が高まりが関与していることが示唆された。 3,無酸素中で特異的に発現する遺伝子を,ディファレンシャルディスプレイ法により検索した。現在まで,無酸素処理でのみ観測されるcDNA断片の32種からNorthern解析によるスクリーニングを経て,無酸素中で一時的に変動する2種の遺伝子を選別した。現在,その塩基配列の決定とその機能の解析を行っている。 4,ウリカワの無酸素中での成長持続にはCa^<2+>の細胞内への取り込み促進が必要であることが,^<45>Caの取り込み実験と各種のCa^<2+>チャネルブロッカーの阻害実験から明らかになった。 以上のように,当初計画した実験計画の2/3近くを行い,当初の期待どおりに,これら水生植物が現在まで知られてきた植物にはない強い嫌気耐性を支える代謝的適応を獲得している可能性を示し,今後の大きな研究の発展が期待できる。
|