Research Abstract |
【目的】macrophageのfoam cellは低密度リポ蛋白質(LDL)が過酸化LDL化し,それをmacrophageがスカベンジャー受容体を介して大量に取り込むことによって形成されると説明されている.即ち,正常のLDLからはmacrophageのfoam cellは形成されないという.我々はmacrophageを傷害した場合にfoam cell形成がどのように変化するかを検討した. 【方法】macrophageはAdamの方法に従ってラット腹腔より採取し,型の如く培養した.LDL(1.006〜1.063g/ml)は24〜25歳の学生からEDTA・2Na加試験管に採取し,超遠心法により分画した.リノール酸パーオキサイドは八木らの方法に従い,リノール酸にリポキシゲナーゼを作用させて生成させ,エーテル抽出後精度は薄層クロマトグラフィーにて確認した.macrophageは5nmol/mlリノール酸パーオキサイドとRPMl中で6時間インキュベートし,傷害macrophageとした.これを洗滌(3回)後,正常LDL(200μg,コレステロール量として)を加えて,2,4,6,12,24,48時間インキュベートして観察した.走査電顕ならびに透過電顕によって形成変化を検討した.過酸化LDLは正常LDLを5μMCuCl_2に24時間透析して作成した. 【結果】1.正常LDLとmacrophageとをインキュベートしてもfoam cellは形成されないが過酸化LDLとインキュベートするとfoam cellは明らかに形成された.走査電顕によってはmicrovilliの増加,filopodiaの弯曲化,平板・結節体(flat・nodule)の発現,また,透過電顕によってはfoam形成によってmacrophageの形成変化ならびにfoam cell形成を確認した.2.macrophageとリノール酸パーオキサイドとをインキュベートしてもfoam cellは形成されなかった.3.リノール酸パーオキサイドと6時間インキュベートしたmacrophageを洗滌し,それに正常LDLを添加して,再度インキュベートすると走査電顕によっては形態変化が,透過電顕によっては大量のfoam cellの形成が明らかに確認された.4.走査電顕写真から算定した弯曲したfilopodiaならびにflat・noduleの発現数は経時的に増加し,透過電顕写真からプラニメーターによって測定したfoamの核を差し引いた細胞質に対する面積百分比を求めると,明らかに増加した. 【結論】macrophageによるfoam cellの形成には,大量の過酸化LDLの存在は必要ではなく,パーオキサイドに接し傷害されたと考えられるmacrophageが存在すると正常LDLによっても簡単にfoam cellは形成される.
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