Research Abstract |
哺乳類の心臓の初期発生に関与する因子を検討するために,原条期マウス胚を培養し,心筋特異的遺伝子(Nkx2.5,MLC2V,MLC2A),ミオシン重鎖蛋白(MHC)と心収縮の発現を指標として,心筋分化過程を解析した。胎生6.75・7.25日胚の原始外胚葉や中胚葉からの心筋分化には,臓側内胚葉(VE)の関与が必須であることが判明した。VEからのいかなる心理活性物質が,心筋分化に関与するかを解明するために,両生類やトリの心発生に関与すると報告されている増殖因子(GF : TGFβ1,TGFβ2,activinA,BMP2,FGF-2,PDGFBB,IFG-1)を培養液に加え,VEを除いた胎生6.75日胚を72時間培養して心筋分化を検討した。それぞれのGFの添加培養では,心筋特異的遺伝子発現に相違はなかったが、MHC産生率FGF-2.43%,PDGFBB 78%,IGFI 88%,TGFβ2とBMP25%,TGFβ1とactivinA0%,自発収縮発現率はそれぞれ19%,13%,22%,以下TGFβsuperfamilyは0%であった。GFは加えず,VEを付けて培養した胚のMHC産生率100%,自発収縮発現率30%と比比較すると,VEの生理活性物質はFGF2,PDGFBB,IGFIに類似した作用を持つ物質であることが示唆された。一方、胎生7.5日胚を培養し,正常発生と同様に,1日後(胎生では8.5日)に自発収縮を開始する心筋分化培養系を用いて,β受容体刺激に対する自発興奮頻度の反応を検討した。β受容体刺激による陽性変時作用は自発収縮開発直後より認められた。ついで,自発収縮開始後1日後(胎生9.5日)の原始心室筋細胞を単離してWhole-cell Clamp法でL-type Ca電流を記録した。β受容体刺激によりCa電流は63%増加した。従来,心発達段階早期ではβ受容体刺激に感受性が認められないとされていたが,本報告は,極めて早期の発生段階の検討であり意義あるものと考えられる。今後,自発収縮開始早期のイオンチャンネル分化とこれに影響を与える液性因子,信号伝達経路の発達についても明らかにして行く方針である。
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