Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 隆朗 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (20178049)
久保田 英朗 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (50170030)
佐藤 貞雄 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (00084799)
庄司 洋史 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (90277913)
李 昌一 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (60220795)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 1999: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1998: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
顎関節の雑音,開口障害,関節部痛を主症状とする顎関節症患者が近年漸増し,この疾患に対する治療指針の確立が望まれている。特に,顎関節内障は病状の進行とともに関節円板の形態変化,滑膜炎,軟骨や骨の破壊などの病変を伴うことが明らかとなっており,これまで炎症性病変とは異なる病態として位置付けられてきた顎関節症に対する考え方を大きく転換する必要性に迫られている。 現在、顎関節炎症誘発因子として,関節に加わるメカニカルストレスがクローズアップされている。これは、関節に分布する神経を刺激し炎症性ペプチドを遊離させることによって神経原性炎症を誘導するとともに炎症性サイトカインなどの遊離を介して炎症症状を悪化させるという仮説である。また,メカニカルストレスは虚血-再灌流に基づくフリーラジカル産生を促進し,これが様々な生体内分子と反応することによって,関節炎の病態発現に関与しているとする可能性が指摘されている。しかし,この反応経路を支持する実験的証拠はない。本研究の目的は、実験的に顎関節炎を惹起した関節滑液からフリーラジカル種を検出し,その発生メカニズムについて解析することである。 15匹のラット顎関節にhuman reconbinant IL-1α(75000/10μL)を注入することによって,実験的関節炎モデルを作成した。生食水0.2mLによる上関節腔のpumping処置によって希釈滑液を採取した。得られた滑液を直ちにspin trap剤5,5-dimethyl-1-pyrroline-N-oxide(DMPO;660mM/100μL)と反応させ,X-band electron spin resonance(x-band ESR)法により経時的に活性酸素種(ROS)の検出を行った。コントロール群として生食水10μLを注入した15匹のラットの滑液を用い同様に検出装作を実施した。検出された滑液中ROSの性格付けは,スーパーオキシドラジカル(O_2^<・->)のscavengerであるスパーオキシドディスムターゼ(SOD;100U),鉄イオンのキレート剤であるデェフェロキサミン(DFX)の効果を指標として解析された。また,生体内ROS産生の触媒として反応する滑液中の鉄イオンの意義についても検討した。 希釈回収した滑液中からヒドロキシルラジカル(HO^・),水素ラジカル(H^・),カーボンラジカル(R^・)が検出され,とくにIL-1α投与群のHO^・ESR信号強度は,コントロール群と比較し有意に高値を示した。SOD添加によりHO^・ESR信号強度は増強され,一方,DFX添加は,HO^・のESR信号強度を減弱させた。また,IL-1α投与群の滑液中の鉄イオン濃度はコントロールと比較し高値を示した。 本研究で得られた結果から,IL-1処置によって誘発される顎関節炎にHO^・ラジカルが重要な役割を演じており,このラジカル種はO_2^<・->不均化反応で生成するH_2O_2と滑液中に遊離増大する鉄イオンとのFenton型Haber-Weiss反応によって生成することが示唆された。本研究は,IL-1に誘導される顎関節滑液中にROSが生成することを報告した最初のものである。また,顎関節内障の患者滑液中でもROSの生成を証明できた。
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