Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 1999: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1998: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1997: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Research Abstract |
本年度は3年間の研究の最終年であり,数学教育におけるエスノメソドロジー的研究を整理,反省し,これまでの研究成果を発表することを中心とした。その中で,研究者や教師の意見や高評を得て,再検討を行った。 これらの検討によって,エスノメソドロジー的研究において,「学校知」という用語だけではなく,それぞれの教室における「教室文化」という用語も必要であることがわかった。学校知というのは,学校教育という社会的活動における,社会的知識を想定する。つまり,カリキュラムを含めた学校における「日常的な知識」を指している。したがって,そこにはやや現状批判的な視点が主となる。しかも,それは個別的な問題ではなく,社会的な問題を探ることになる。 しかし,それぞれの教室には,教師と子どもが,社会的相互作用の中で構成する固有の状況や知識がある。それは,「マイクロ文化」とでも呼ぶべきものであり,当然各生徒の学習にとっても重要な役割をもっている。それを「教育文化」と呼び,エスノメソドロジー的に研究する意義は大きい。そのためには「文脈表示性」「相互反映性」といった概念が有用である。 また,数学教育におけるエスノメソドロジー的研究においては,「相補性」という概念が重要であることが分かった。つまり,数学教育における研究の大きな流れには,構成主義と社会文化主義がある。これらの基礎的な理論や観点は,対立するものがあり,一見すれば矛盾している。しかし,この両者の観点は,数学教育の研究においては相補性をもつと考えるべきものであり,一方だけでは子どもの思考や学習,教師の指導の在り方を十分に説明することはできない。このことをわが国の小学校の授業を事例とし,エスノメソドロジー的な手法によって示した。これらのことをまとめた論文「数学教育における構成主義と社会文化主義の相補性について」は,平成11年度全国数学教育学会において学会奨励賞を得ることができた。
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