Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2009: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Research Abstract |
有限温度の異常Hall効果における非弾性散乱の影響を調べた. 異常Hall効果は強磁性体においてスピン軌道相互作用によって横方向の電流が誘起される現象であり,多バンド系における異常速度(Berry位相)による内因性機構と異常な不純物散乱による外因性機構の2つの機構が提案されていた.絶対零度においてはこれらを統一的に扱う理論的枠組みが構築され,ほぼその全貌が明らかになっている.有限温度においてはフォノンやマグノンによる非弾性散乱を受け,外因性機構は抑制される一方で内因性機構は強固に残ることが実験的に知られていたものの,理論的な裏付けはなされていなかった. 我々は強磁性合金に焦点を当て,内因性・外因性両機構を示す最小模型を構成した。不純物はs軌道とpx-ipy軌道をもち,希薄な場合両者の干渉によって外因性機構の1つであるskew散乱を示す.逆に周期的に配列した極限ではpx-ipy軌道の存在により内因性機構を示す,この模型に対し,自己エネルギーの虚部を現象論的に定数・として導入した久保公式を用いて縦・Hall伝導度を数値的に計算した.得られた値を不純物配置に関して平均することにより,不純物による弾性散乱に関しては厳密に扱った. まずHall伝導度σxyと縦伝導度σxxに関して,実験グループが提案していたスケーリング関係-σxy=ρxy0*σxx^2+bが成り立つことを見出した.第1項が外因性機構の寄与であり,Matthiessenの法則と合わせて非弾性散乱によって抑制される.第2項が内因性機構の寄与であり,非弾性散乱の強さによらない.外因性機構の寄与については,バンドがよく定義される両極限でのみ,さらにskew散乱とside jumpの寄与に分解できることも分かった. 非弾性散乱に抑制されない内因性機構は,Fermi分布の温度依存性によって温度変化する.特に巨大なBerry曲率を生み出すバンド反交差点がFermi準位直上にあるとき,大きな温度依存性を示す. 外因性機構の温度依存性については,非弾性散乱の機構を注意深く検討する必要がある.我々は電子-フォノン相互作用について自己エネルギーの虚部の周波数依存性を取り入れた計算を行った.Debye温度以下の低温では自己エネルギーの虚部が定数であるという近似が妥当でないが,ω=0での値を用いた定数γでの計算で再現できることを見出した.これはFermi面以下全体の積分でなく,Fermi準位直上が主にHall伝導度に寄与していることを示唆する,既に知られているように縦伝導はω=0での値で決まることから,先の計算で得られたスケーリング関係も成り立つことが期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非弾性散乱の起源として電子-フォノン相互作用を取り入れHall伝導度の温度依存性を数値的に調べたが,もうひとつ重要な起源に電子-マグノン相互作用がある.これはスピン反転を伴い,前者とは定性的に異なるとされている.有限温度の異常Hall効果の全貌を明らかにするには独立な両者を取り入れた統一的な手法で計算する必要がある.
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