Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2011: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2010: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2009: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
|
Research Abstract |
メチルアミンの部分重水素置換体,CH_3ND_2およびCD_3NH_2を用いて,それぞれをH原子およびD原子と反応させ,各置換基のH-DおよびD-H交換速度を求めた。メチルアミンのメチル基のH-D交換,D-H交換,そしてアミノ基のH-D交換,D-H交換速度定数をそれぞれRc_<H-D>,Rc_<D-H>,Rn_<H-D>,Rn_<D-H>とすると,Rc_<H->D > Rc_<D-H> >> Rn_<H-D> > Rn_<D-H>という関係が得られた。同じ置換基のH-DおよびD-H交換速度を比較すると,H-D交換,つまりD濃縮反応のほうが速いことが明らかになった。また,CH_3NH_2全体のH-D交換反応,およびCD_3ND_2全体のD-H交換反応の速度定数をそれぞれR_<H-D>,R_<D-H>,とすると,R_<H-D>〓Rc_<H-D>,R_<D-H>〓Rc_<D-H>という関係が成立した。これはメチル基の水素交換速度がメチルアミン全体の水素交換速度を支配していることを意味する。これは,メチル基・アミノ基の水素交換が同時に起きているためだといえる。 メチルアミンのD(H)濃縮反応は,D(H)原子によるH(D)引き抜き反応→D(H)原子付加反応によって進行すると考えられる。たとえば(1)CH_3NH_2 + D→CH_2NH_2 + HD,(2)CH_2NH_2 + D→CH_2DNH_2のように進む。反応(2)はラジカル同士の反応であるため,速やかに進む。一方,反応(1)には分子からH(D)原子を引き抜く際に,2000-5000Kというエネルギー障壁が存在する。~10Kという極低温では反応(1)に必要なエネルギーを得ることは難しく,熱的に反応は進行しない。したがって,反応(1)は量子的なトンネル効果によって進行したと結論できる。 本研究で,メチルアミンは水素同位体交換しやすい分子であることがわかった。これは,星間分子雲の重水素濃集モデルで見積もられている最大のD/H原子比(~0.05)と,R_<H-Dと>R_<D-H>の比(R_<H-D>/R_<D-H>たとえば~2at 10K)を考慮すると,星間分子雲でのメチルアミンは水素交換反応によってそのD/H比が10^<-2>オーダーであることを示唆する。これは,星間分子雲に存在するメタノールやホルムアルデヒドの高いD/H比(~10^<-2>-10^<-1>)に匹敵する。いまだメチルアミンの重水素置換体の存在は星間空間で確認されていないが,今後の発見が期待される。
|