Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
門脈圧亢進症においては、類洞周辺部で活発に増殖する筋線維芽細胞の異常収縮や線維産生が、血流抵抗の増加に寄与すると考えられている。肝硬変の病態形成に際してプロスタグランジンの血中濃度が上昇することが知られており、本研究は、筋線維芽細胞の収縮機構ならびに線維産生機構への、PGE2を始めとしたプロスタグランジン類の関与を分子生物学的に解明することを目的とした独創的な研究である。今年度は、昨年度の研究結果より得られた、プロスタグランジンD2(PGD2)による線維化抑制作用をより詳細に解析した。具体的には、組織の線維化におけるPGD2の関与を明らかにするため、生体内でPGD2を合成している酵素の1つであるH-PGDSに着目し、H-PGDSの遺伝子を欠損したマウス(KOマウス)を用いて検討を行った。線維症モデルマウスにおいて、H-PGDSは主に血管内皮細胞や、線維化病変部に浸潤した炎症性細胞に発現していた。KOマウスにおいて線維症モデルを作成したところ、野生型マウスと比較して線維化がより増悪した。線維症モデルにおいては、線維化に先立って炎症反応がおこることが知られており、KOマウスでは炎症性物質の発現が顕著に増加していた。また、KOマウスでは炎症期における血管の透過性が亢進しており、これらの要因によって病変部への炎症性細胞の浸潤がより加速することが、線維化増悪の原因であることが示唆された。以上の結果から、H-PGDSによって合成されたPGD2が線維化を抑制することが、in vivoレベルでも明らかとなった。
All 2011 2010
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Journal of Pharmacological Sciences
Volume: 116 Issue: 2 Pages: 197-203
10.1254/jphs.10325FP
10029894739