Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
動物は、過去の記憶を長期的に保持することにより、経験に伴った行動が可能になる。記憶の保持は、したがって学習、精神疾患に密接に関係がある。しかしながら、長期記憶がどのように保持されるのか、まったくの謎であった。過去の研究から、長期記憶と遺伝子発現制御の関連が示唆されてきた。私は、遺伝子発現を制御するエピジェネティクスが記憶に関与するのではないかと考え、これを検証する研究計画を提唱した。初年度にはエピジェネティクスが長期的な記憶に関与することを遺伝学的に明らかにし、次年度は記憶中枢の細胞核のみを単離し、クロマチン免疫沈降法と組み合わせた新規の手法を確立した。この新規手法を用いて、記憶誘導後、記憶中枢でエピジェネティクスが変化する遺伝子座を網羅的に解析した。最終年度である本年度初めにコンピューター解析が終了し、記憶中枢における、記憶により変化するエピジェネティクスの一端を解き明かすことができた。本年度10月より、さきがけJSTの領域プログラム「エピジェネティクスの制御と生命機能」の研究課題として採択されたので、特別研究員を中途辞退したが、現在も本研究期間に得たデータをもとに、長期記憶の保持とエピジェネティクスの関連を追及している。本研究が今後、記憶の基礎理念を解き明かすものとなるとともに、記憶保持が関与する、学習障害や精神遅滞、トラウマ疾患といった症状の改善につながっていくことを強く期待する。
All 2012 2011 2010
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results)
Genes Brain and Behavior
Volume: 1 Issue: 1 Pages: 79-86
10.1111/j.1601-183x.2011.00748.x