Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2009: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Research Abstract |
慢性腎臓病の進行期では,尿細管周囲毛細血管の数的減少,間質の線維化に伴う酸素拡散能の低下などにより,腎臓の慢性低酸素状態が進行し組織内の酸化ストレスも亢進することが知られている.一方生体は,造血や血管保護・新生,解糖系の促進などさまざまな低酸素応答を備えている.酸素を直接結合しうる生体内分子の代表格がヘモグロビンやミオグロビンなどのグロビン分子である.研究者は,ラット線維化肝から新規グロビン分子として近年同定されたサイトグロビンに注目した.同遺伝子のプロモータ領域には低酸素誘導転写因子(HIF:hypoxia-inducible factor)応答部位が含まれることが特徴的だが,生体内発現部位や作用については見解の一致を見ていない.そこで,同分子の生体内における低酸素や酸化ストレス応答との関わりを追求した.まず,複数の抗サイトグロビンポリクローナル抗体による免疫組織化学染色を行ったところ,ラット腎の間質細胞が染色され,腎に虚血再灌流を誘導するとサイトグロビン陽性細胞が数的に増加し,かつmRNA・蛋白が発現亢進した.そこでサイトグロ分高発現ラットを確立し腎虚血再灌流傷害を誘導したところ,高発現ラットの腎障害は野生型よりも軽く,腎間質における酸化ストレス関連分子の沈着が抑制されていた.また,高発現ラットから単離された初代培養腎線維芽細胞は過酸化水素培地添加に誘導される細胞死が軽度だったのに対し,培養ラット腎線維芽細胞株でサイトグロビンを発現抑制すると過酸化水素培地添加による細胞内ラジカル産生が亢進し細胞死が顕著だった.次に,ヘム部位に点変異を導入したサイトグロビン分子を培養細胞に高発現させたところ,正常型高発現で見られた抗酸化作用が観察されなくなった.このように,サイトグロビンは腎間質線維芽細胞に分布,酸化ストレスでさらに発現亢進し,腎間質低酸素環境における新規かつ重要な抗酸化因子であることが明らかとなった.
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