エルンスト・ユンガーの機械論を通じた「政治の審美化」研究
Project/Area Number |
09J10717
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
History of thought
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 晴生 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2009 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2011: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2010: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2009: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | エルンスト・ユンガー / 保守革命 / マルティン・ハイデガー / 技術 / 技術論 / ヴァイマル共和国 / 市民社会 / ナショナリズム / カール・シュミット / フリードリヒ・ニーチェ / 生の哲学 / 歴史哲学 / 動物 / シュテファン・ゲオルゲ / ゲオルゲ派 / ヴァルター・ベンヤミン / フリードリヒ・グンドルフ / 歴史主義 |
Research Abstract |
三年度目(最終年)である本年は、ヴァイマル時代のエルンスト・ユンガーによるヨーロッパ哲学史の独自の受容という小テーマを設定し、資料調査と研究発表を行った。 1.ベルリン州立図書館における資料調査 キャリア初期のユンガーの思想形成を分析するためには、彼が1920年代に他の民族主義者の知識人と共同で編集していた雑誌を調査することが有益と考えられる。ベルリン州立図書館で資料調査を行い、ユンガーが編集に関わったStandarte,Wochenschrift des neuen Nationalismus(「軍旗:新ナショナリズミ週刊誌)の第1年1号(1926年4月1日、ベルリン)およびArminius,Kampfschrift fur deutsche Nationalisten(「アルミニウス:ドイツのナショナリストのための戦闘雑誌」)を、マイクロフィルムより閲覧して複写した。 2.Die Einsichten in die"Technik"im Denken des 20.Jahrhunderts:Martin Heidegger und Ernst Junger(ハレ・ヴィッテンベルク大学における日独共同大学院プログラム11年秋季セミナーでの発表) ユンガーによるヨーロッパ哲学史の受容を論ずるためには、同時代かつ同傾向(「保守革命」)を持つとされる哲学者マルティン・ハイデガーとの論争的な応答を分析することが必要である。本発表(『20世紀の思考における「技術」への洞察:マルティン・ハイデガーとエルンスト・ユンガーを中心に』)では、研究全体のテーマである機械・技術に対する両者の反応を、各人のテクストを比較しながら分析した。同時代のシュペングラーや未来派などが技術をあくまでも人間に帰属する客体として捉えるのと異なり、ハイデガーとユンガーは技術のことを人間の特権的な主体を奪う要因、主体と客体の区別を不安定化する要素として考えていた。ほぼ同一の地平に立つ両者に生じた技術に対する悲観論と肯定論の一つの要因として、ユンガーにおける近代的な市民社会の拒絶ないしポスト市民社会の構想を差異の要因として提案することを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エルンスト・ユンガーの機械論(技術論)を基軸に、ヨーロッパ思想における「政治の審美化」を通時的に探求しヨーロッパ世界の美学-政治思想史を叙述することが、本研究の大きな目的であった。現在までに発表された内容としては、(1)ユンガー本人の著作における「技術」や、そこから演繹される「歴史」「人間(動物)性」のテーマの内存的な分析、また(2)ユンガーと彼と関わりの深い同時代の著者たち(ハイデガー、シュミット、ゲオルゲ派、未来派)の間の論争的な応答の二点であり、ユンガーを基準として考えた場合、共時的な思想の布置関係についてはほぼ研究を終えており、上記の分類では(2)に該当すると考えられる。他方、ユンガーの哲学史受容の視点から追求される通時的な思想史に関してはニーチェを除いて着手されていないため、そちらは博士論文の執筆・提出に際しての課題とされる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、申請者の博士論文の提出を目指して遂行されつつあるものである。博士論文の執筆に当たっては、交付申請書の時点での研究計画を大枠では踏襲しながらも、論文の構成と展開について若干の修正を加えることを予定している。具体的には、(1)技術に媒介される「政治の審美化」の通時的な研究としていた論文の主題を、エルンスト・ユンガーその人の全体的な読解に変更し、通時的な思想史研究についてはユンガーによる過去の著者の受容という形でユンガーを対象とするモノグラフのなかに組み込む。また、(2)ユンガーを読解する際には、作品のなかで多用される「境界(Grenze)」の概念に着目し、境界を巡る思考を構築した哲学者としての総合的な読解を試みる。技術や審美性のテーマも、主体(人間)と客体(自然)の境界への問いの変奏として、境界論のなかに組み入れて追求を行うものとする。
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Report
(3 results)
Research Products
(7 results)