Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉森 昭夫 岡山理科大学, 工学部, 教授 (50013470)
塚田 捷 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (90011650)
一宮 彪彦 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00023292)
興地 斐男 和歌山工業高等専門学校, 校長 (20029002)
新庄 輝也 京都大学, 化学研究所, 教授 (70027043)
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Research Abstract |
総括班は今年度4つの研究会等を開催した。 (1)表面・界面 討論会(5つのテーマに絞っての討論会 (1)表面における相転移、 (2)表面物性(伝導、エレクトロマイグレーション) (3)特異な表面構造、超薄膜の物性、 (4)スピンからんだ表面・界面現象、 (5)原子移動、ステップダイナミクスなど (2)国際シンポジウム 表面・界面 異なる対称性の接点の物性(ISSI PDSC-2000)開催 平成12年10月17日(火)-20日(金) 愛知県産業貿易館:名古屋市中区丸の内3-1-6(参加者 217名) プロシーデングスはSurface Science特別号として出版予定 (3)ワークショップ:Si(111)√3×√3-Ag表面 (4)年度末全体会議・研究会 討論会は、最終年度であるので、これまでの4年間の研究成果の中でカテゴリー的に的を絞った問題について問題提起等自由に討論して、新しい方向を見出す努力を行ったものである。 国際シンポジウムは文部省の支援で行ったもので、本研究の最終年度に、成果を内外に公表するようにとの要請に応えるものである。総括班では成果の公開といういみで、2年前にも同様な国際シンポジウムを班で組織した。今回は参加者も約倍の規模となった。班員からも沢山の発表がなされた。現在ほぼ査読が終了し、プロシーデングスとして出版される予定論文数107編のうち過半数の62編がグループからのもので、この特別号は最近のグループの成果の報告集的な側面があるといえよう。 ワークショップは本グループ内で理論と実験面から見出されたSi(111)√3×√3-Ag表面の低温での相転移に関連してその表面研究者を班員外からも招いて開いたワークショップで、この表面系の特徴を浮き彫りにさせることが出来たワークショップであった。 年度末の研究会は本年度の成果を討論した。 その他、学術振興会から新プロリーダー宛に「学術月報」の特集号に表面・界面を提案してはどうかとの連絡があり、班員を中心に、表面・界面の化学的側面、応用物理的側面を班員外の人に御願いして企画し、昨年12月号に掲載された。 総括班の会議は国際シンポジウム中に外国人班員を含めて開催された。外国人班員からは、会議全体の高いレベルについて発言があり、本グループについても評価を得た。年度末の研究会においてもまとめの総括班会議が開いた。表面と金属界面グループとの間の協力体制の
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充実や理論-実験グループの協力は多かったのに比べて実験グループ同士の協力をさらに求める意見も出されたが、多くの議論は、この様な基礎に根ざした表面・界面研究者グループが今後もこのような組織を結成して、研究を推進できるようにしたいとの要望であった。例えば、外国人班員からは今回の成果をふまえて、表面分野で、今後発展させなければならない分野として、磁性金属から磁性半導体、磁性絶縁体、磁性分子までを含んだ表面spintronicsのような研究グループの立ち上げが提案されていた。一言で表されるような先鋭的な単目的的な課題ではないが、物性物理の基礎を支える広い研究グループについての支援が望まれる。 高速ビームロッキングRHEED装置によりGaAs(001)2×4表面のホモエピタキシャル成長中の構造について、2二量体-2二量体欠陥構造であることを明かにした.エネルギーフィルタ型RHEEDを開発し、2eVの分解能を達成した.RHEED散漫散乱強度を低ノイズで測定するためのビデオ測定システムを完成させ,特に菊池線上や回折スポット近傍のエネルギー損失スペクトルの測定に成功し,RHEEDにおける非弾性散乱過程についての知見を得た.Si(100)表面上に走査トンネル顕微鏡(STM)の探針を用いてシリコンナノ構造を形成し,その崩壊過程を測定した.その結果,Si(111)上のナノ構造の崩壊過程とは大きく異なり,崩壊に基板構造およびステップ端の構造が大きく寄与している事を明らかにした.(一宮) Si(111)√3×√3-Ag上のAg薄膜成長界面の√3構造及びAg薄膜の結晶配向性について、パターソン法により解析した.その結果,界面の構造が低温におけるSi(111)√3×√3-Ag構造に類似である事を明かにした.Ag薄膜の結晶配向性についてはAg薄膜の成長時の基板温度が室温の時には、配向成長するのに対し、基板温度が低温の時には、無配向に近くなっていることを明かにした.また表面の再配列構造による基板に垂直方向の格子緩和について,Si(111)7×7構造、Si(111)√3-Ag構造及びSi(111)√3-Al構造では歪は数十nmの深さまで及ぶことを明らかにした.GaAs(111)A面及びGaAs(111)B面上に成長したGaN薄膜の極性を調べた.膜厚100nmのGaNバッファ層のみを成長した試料では、A面上ではGa極性を持ち、B面上ではN極性を持つGaNが成長する事を明かにした.GaNバッファ層上にGaN薄膜をエピタキシャル成長した試料では、両表面上で共にGa極性の成長となっていることを明かにした.(秋本) 表面内殻準位分解光電子回折によるSi(001)(1x2)-Sb表面におけるSi 2p内殻準位シフトの同定では,Sbダイマーに直結した第1層Si原子から由来することを見い出した.新しく開発した相関熱散漫散乱電子回折法を用いて,Si(111)√3x√<3>-In表面とSi(001)4x1-In表面の構造解析を行った.Si(111)√3x√<3>-In表面については,構造パラメーター〓詳細に決定するとともに,SiとInという電子に対する散乱能の大きく異なる2元表面系についての相関熱散漫散乱電子回折法の特質を明らかにした.Si(001)4x1-In表面については,すでに提唱されている多くの構造モデルの内,表面X線散乱から提唱されているモデルが適していることを見い出した.Si(001)基板上に人工合成ダイヤモンド粒子(粒径数ミクロン)を分散塗布後CVD(Chemical Vapor Deposition)法でダイヤモンドを更に成長させた試料の2次電子分光と電界放射電子分光/顕微鏡測定を行った.その結果,電界放射特性を左右する最も大きな要因がダイヤモンド粒子と基板との界面にあることが示唆された.(河野) W(110)清浄表面からのW4f光電子回折における円二色性を、新しく開発した二次元表示型電子エネルギー分析器を用いて調べた.光のヘリシティをかえると、光電子のピーク位置は入射光の光軸を中心として左右に回転し,この回転角は理論的に計算する事ができる.本装置は角度分解能が向上した(±1°以下)ため、回転角の理論との比較が可能となった.測定の結果、実際の回転角の値は、予想値よりも20-30%程小さくなることが分かった.もし一回散乱を仮定するならば、原子間距離を最近接の値ではなく、放出原子から見て最近接の原子の背後にある原子からの散乱をも取り込んだ有効放出散乱原子間距離Rを考える必要があり,これを用いて,原子位置の3次元表示に成功した.(服部) アルカリ吸着金属表面構造の低速電子回折(LEED)による研究ではCu(001)表面にMg原子を室温で吸着させたときに形成するc(2x2)構造の決定をテンソルLEED法によりおこない,表面銅原子がMgと置換した構造であることが判明した.またCu(001)表面にMgとアルカリ金属原子(AM)との共吸着において{Mg,Li}系,{Mg,K},{Mg,Cs}系,いずれの構造においても、Mgは置換吸着するのに対して,AMは単純吸着(窪み位置)することを明かにした.Si(111)7x7表面における局所構造変化の走査トンネル顕微鏡(STM)による研究ではSTMにより、(7x7)表面に形成した(3x3)DASのアイランドの端および(7x7)表面の単原子ステップ終端部に長丸形2重輝点を見出し、その構造を提案した.(栃原) STM真空ギャップ中に励起した電子定在波の微分コンダクタン〓のピーク間隔は試料表面近傍の電界に依存する.探針形状を制御して真空ギャップ中の電界の境界条件をそろえ、Au(111)、Si(111)、Si(001)、Ge(001)面の表面電界を調べ,ピーク間隔の変化を確認し、表面近傍の電界変化を推量した.エネルギー分析器を備えた電界放射型(FE)-STMを開発し、探針から電界放射させた電子を励起源としてプラズモン損失過程やオージェ過程による後方散乱電子スペクトルを調べた.Si(111)面に蒸着したGe表面をSTM観察し、STM探針を電界放射源として後方散乱電子のエネルギースペクトルを取得した.非接触原子間力顕微鏡(nc-AFM)では,nc-AFM像取得と同時にトンネル電流と散逸エネルギー変化を計測したところ、原子上や探針を試料に近づけたときに散逸エネルギーが減少した.簡易モデルをたてて散逸を計算し、カンチレバーの加振エネルギーの減少を確認した.探針-試料間相互作用に基づく微少な散逸エネルギーを実験的に計測するためには、探針を先鋭化し全相互作用力を小さくする必要があることもわかった. (富取)Cu単結晶基板上またはMgO(001)基板上に蒸着したCuバッファー層上のFeあるいはCo成長において酸素サーファクタント効果があることを見出した.磁気光学カー効果(回転角と楕円率)の波長依存性を低温から室温まで測定し、1.8eV〜3.5eVの間で温度に依存するサブピークの存在を見出した.これはγ-Fe/Cuの量子井戸(QWS)効果によるものと考えられる.QWS遷移が強磁性γ-Feの交換分裂大きさに依存する新しい現象を見出した.ハーフメタル(LSMO)を用いた強磁性トンネル接合を作製し,TMRとそのバイアス依存性をしらべ、界面における強磁性金属のスピン分極の符号がバルクと異なることを見出した界面の計算も行った.結晶構造の異なる金属で構成される磁性多層膜のGMRの研究を行い、界面構造の変化と磁気モーメントの配向性が磁歪を介してGMRに大きく依存することを示した.(松井) 八木らは昨年に引き続いて、本研究で整備した超高真空電子顕微鏡を用いて、Siの高指数面である(55 12)表面の高分解能REM観察に適用し、次のような成果を得た。(337)から(225)表面に至る面においては、それらをサブユニットして組み合わせた(55 12)、(13 13 31)表面などが安定して形成されること、(337)や(557)サブユニットはさらに(113)や(112)のユニットの組み合わせで形成されることを明らかにした。これらのサブユニットを幾つか増減させることはいろいろな高さのステップを導入することと同等であることがわかった。(55 12)表面のラフニング転移では、遷移領域で不整合相が形成されることを見出したが、これが上記の性格をもったステップが動きやすくなるためであることが分かった。またAu吸着によるモルフォロジーの変化も上記特徴を反映したプロセスで起こっていることも分かった。また、昨年に引き続いて、REM非弾性散乱電子の可干渉距離の解析を行った。また昨年に引き続き、表面エレクトロマイグレーションによるstep instabilityのダイナミックスを解析し、理論グループのpredictionとの比較を行い一部定性的な一致をみた。 長谷川らは、構造と表面電気伝導を調べる4探針STM法を完成させ、プローブ間を1μmから1mmまで変化させて伝導度を測定し、バルク伝導、空間電荷層伝導、表面状態バンド伝導を識別しながら測定できることを明らかにした。また、昨年見出されたCDWを伴うSi(111)4×1-Inの低温相転移がわずかな不純物で消失することをRHEED、STM、伝導測定の結果から結論した。 村田らは、昨年度までに成功した金属基盤上の酸化物超薄膜の構造を背面ラウエ法で解析し、SiO_2/Ni(111)系ではシリサイドが基盤に整合して形成していることを明らかにした。 西田らは極低温STS/STM法で、磁性超伝導体YNi_2B_2Cの境界効果の実験からクーパー対軌道対称性は異方的なs波でることを明らかにした。 財満らは、ボロン偏析Si(001)2×1表面での酸化過程をSTMで観察し、偏析構造を解析すると同時に、ボロン起因構造は酸化されにくいことを明らかにした。また酸素吸着もダイマー直上というこれまでに無い特異な位置で起こることが分かった。CoSi_2/Si(001)成長についてSbによる表面修飾の効果の詳細を調べた。 越川らは総括班のBauerらと協力して、清浄および水素終端表面におけるCuの吸着過程の違いの詳細をその場観察し、表面拡散の変化に起因する吸着過程の大きな変化を観察した。さらに、3次元ナノ粒子の形態を解析することに成功した。 山本らはSi(111)√3×√3-Ag表面からのSTM発光のスペクトルの解析から、これが表面状態密度を考慮した逆光電子分光過程によるものであることがわかった。このことは局所領域の逆光電子分光の可能性を示唆していて興味深い。Si(111)7×7表面からのSTM発光におも成功しており、現在解析を進めている。一方、透過電子顕微鏡では2粒子系の局所表面プラズモン発光を検出しており、1粒子系と大きく異なる共鳴を観察した。 綱島らは、昨年に引き続き、反強磁性/強磁性界面(MnPt/NiF)での交換結合の解析を進めた。その結果、反強磁性が界面でスピンが揃った場合には面内トルクが4回対称をしめし、そのMnPt膜厚依存性を測定し、簡単なシミュレーションを行ったが、合う部分と合わない部分があり、今後の検討を要する。一方界面でスピンがキャンセルする場合は4回対称性をしめさないことが分かった。 新庄らは電子ビームリソグラフィー法で磁性体のドットやワイヤーを形成させ、円形ドットにおけるボルテックスの存在をその反転過程を含めて初めて立証することに成功した。一方Co/Ru人工格子については、Co層内の核位置での内部磁場の測定から、Co/Ru界面とRu/Co界面での構造と磁性の違いが存在することを見出し、この系が小さなGMRしか示さない現象と関係つけることが出来た。鈴木らは、これまで行ってきたGaAs探針を用いたスピン偏極STMの探針内の偏極のダイナミックスを時間分解PLで調べ、p型でスピン緩和時間が100psec弱であることを見出し、探針内の10%以上の偏極が可能であることが推察され、これまでの磁区の観察結果を裏付けた。 非接触原子間力顕微鏡像/力分光の第一原理計算による解析法を開発した。熱揺らぎを考慮したSi(111)-Ag表面のncAFM像のシミュレーションを行い、実験結果を再現した。散逸項の起原、不可逆表面構造変位による機構を研究した。Si(111)-Ag表面、Ge(001)清浄表面などの構造、動力学、相転移を明らかにした。原子/分子架橋構造の量子輸送を解析し、カーボンナノチューブ接合系の量子機能を探索した。(塚田) 水素化Si(100)面上Gaワイヤーでの磁気的秩序の発現を見い出した。カーボン・ナノチューブの開いた端での飛来原子の吸着・拡散を詳細に調べた。チューブの壁を伝った拡散とそれに引き続く端での原子の取り込みが、エネルギー的に最も起こりやすいことを明らかにした。(押山) CuやAl表面にアルカリ・アルカリ土類原子が吸着した系の安定性と電子状態の特異性を調べた。Na/Al(001)とLi/Al(001)の系に対して単純吸着構造と置換吸着構造の構造最適化を実行した。(小口) ダイヤモンド結晶粒界とシリコン結晶粒界の局在電子状態について、粒界の構造最適化とギャップ中にあらわれる界面局在状態の特徴を調べた。一部の粒界ではシリコン、ダイヤモンドともに無視できないギャップ状態の出現する可能性が示唆された。シリコン表面上の不飽和炭化水素吸着構造と電子状態についての研究を行った。(常行) 密度汎関数法により、多様なカーボンナノチューブの結合長を精密に決定した。直径と螺旋度に依存して結合長が変化していることを解明した。(斎藤) 表面系やナノ構造系で必要な、数千原子を含む大規模電子構造計算のためのプログラム開発を行った。(藤原) Ga終端GaAs(001)表面上でのAs原子とダイマーのポテンシャル面を計算し、吸着位置と拡散障壁の異方性を求めた。GaAs(001)表面のエピタキシャル成長のGa:As供給比依存性を動的モンテカルロ法で調べ、Asが成長を支配することを示した。歪みエネルギーを考慮した動的モンテカルロ法によりGe/Si(001)系の置換型拡散・浸透を計算した。(石井、川村) Si(100)表面上のピラミッド構造の崩壊過程をシミュレーションで再現した。(川村) Si(111)面のステップ構造変化を、直流通電効果を考慮したTASK(Terrace-Adatom-Step-Kink)モデルを適用して調べた。拡散律速領域や捕獲律速領域でのステップ構造を明らかにした。(名取) Si(111)( )Ag表面の相転移とディバイ・ワラー因子のシミュレーション計算を行った。秩序無秩序型構造相転移の結果は、表面X線回折と矛盾しない。(吉森) 強磁性トンネル接合における磁気抵抗効果とスピン分極率を、タイトバインディング模型を用いて解析した。得られた電子状態をモデル化してTMRを計算し、実験結果を説明した。(井上) STM電流を非弾性成分に分ける計算法を、銅(001)表面上に吸着したアセチレンおよび一酸化炭素に適用し、実験を定性的に説明した。一酸化炭素系について、トンネル伝導率から各振動モードの寿命を求めた。(馬越) 金属表面上の吸着磁性原子のSTM像とSTSスペクトルを解析し、近藤効果の実空間観察の可能性を指摘した。(笠井) 振動緩和時間分解分光法におけるポンプ、プローブパルス形状の影響を解明した。金属表面・吸着子の非占有励起状態を探る2光子分光法の素過程の理論を確立した。(上羽) Less
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