Project/Area Number |
10112215
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
大橋 英夫 専修大学, 経済学部, 助教授 (30245948)
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Project Period (FY) |
1998
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
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Budget Amount *help |
¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 1998: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 中国 / 中央・地方関係 / 財政 / 金融 |
Research Abstract |
本研究では、財政・金融からみた現代中国の中央・地方関係に関して、次のような成果が得られた。 (1) 財政:1980年、1985年、1988年、1994年に実施された財政改革の制度的把握を行った。次に地方分権化に伴い中央の財政収入が低下してきたことを統計的に実証した後、中央財政増収策に対する地方の抵抗を抽出・分類した。ここから分権的な財政制度の導入が、地方財政収入を極大化する動機づけとなったことが判明した。これに対して中央は1994年に積年の課題である中央・地方間の分税制の導入に踏み切ったが、分税制は中央と地方の妥協の産物であり、税制の規範化も不完全という課題を残している。そのため改革・開放期の財政は本来の政策的機能を果たすというよりも、むしろ中央・地方間の経済資源争奪競争の主要な対象となった。 (2) 金融:統計分析では、改革・開放期に金融による財政機能の代替化がみられた。この時期に繰り返しみられた経済過熱は、マネーサプライと信用規模が適切に管理されている限りは回避される。しかし中国の金融システムを仔細に分析すると、地方の銀行支配、地方と銀行の癒着、銀行に対する政治介入、地方金融機関の設置などの問題が存在しており、これが経済過熱の主たる原因になっていることが判明した。マクロ経済の安定化装置として金融政策が有効に機能するには、結局、企業が価格のシグナルに敏感に反応するような環境整備が必要であり、マクロ経済安定化の課題はミクロ経済の主体である企業の改革に引き継がれた形となっている。 以上の考察を通して、次のような政治的含意を得ることができた。(1)経済分権化にもかかわらず、中国の政治体制はその強靭性を保持している。(2)政治体制の強靭制を反映して、中央の行政的手段は極めて有効に機能した。(3)しかし経済分権化は、中長期的には中国の政治体制に少なからぬインパクトを及ぼしている。
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