Research Abstract |
青森県三内丸山遺跡,宮城県里浜貝塚遺跡,岐阜県宮ノ前遺跡など17遺跡の縄文時代早期から古代に至る各時代の樹種未調査試料約2400点の提供うけ,切片を作成し,樹種を同定した.韓国金浦市の水田地帯の泥炭層の試料をソウル大学と共同で採取し,それらの放射性炭素年代を測定するとともに花粉分析,種実遺体分析,珪藻分析,プラントオパール分析を行い,それが縄文時代前期相当の泥炭層で,当時はクリ属,コナラ属などからなる落葉広葉樹林が拡がり,照葉樹林はなかったことをを明らかにした.種実遺体分析,プラントオパール分析ではイネの検出が期待されたが確認できなかった.また,韓国木浦市の務安良将里遺跡の古墳時代前期に相当する遺構を構成していたクリ材等約20本の試料の提供を受け,その樹種を調べた結果,我が国の杭材と同じく,クリを主体にしてナラ類,クヌギ類が混じる組成であることを明らかにした. 一方,最終氷期の泥炭層から出土した化石球果からDNAを抽出しPCR法により増幅してその塩基配列を解読し,現生種との比較を試み,一部については解読に成功した.しかし,弥生時代のカシ類の木製農具からはDNAの抽出,増幅に成功しなかった. また,これまで得られた遺跡出土木材樹種データのデータベース作成のため,古いデータをフロッピーディスクから読み出し,新しいファイルに編集し直すことを行った.しかし,過去のデータが入っている5インチフロッピーディスク87枚の内,約40枚が解読不可能であった.古いフロッピーは既に20年近く経過しており,過去の電子情報が破損していることが明らかになったことで,新たに入力し直すと共に,CDなど安全なデータの保存を計る必要が明かとなった.
|