Research Abstract |
中性子星コアの高密度領域で存在しうるハイペロン物質の問題については相互作用の不確かさもあってなかなか現実的課題とはなって来なかった。しかし,最近では,中性子星の冷却問題に重要な役割をもつこと,ハイペロン-核子(Y-N),ハイペロン-ハイペロン(Y-Y)相互作用についての知見が増えていること,等を背景としてハイペロン物質への関心が急速に高まっている。本研究では(1)Y-N,Y-Y相互作用の今日的知見を生かしつつ,ハイペロン物質の現実的計算に適用しうる有効相互作用Vを構成すること,(2)ハイペロン物質相に於ける超流動の可能性を検討し,冷却問題への効果を調べること,及び(3)熱い場合を含むハイペロン物質相の計算(エネルギー,組成)を行い,この相が通常の冷たい中性子星や誕生時の熱い中性子星に及ぼす効果(状態方程式や熱的進化等)を議論すること,を課題としている。以下に研究成果の現状を述べる。 (1)について: 中性子物質にαの割合でハイペロンが混在した系を対象にG行列計算を行い,密度ρと混在度αに依存するY-N, Y-Y有効相互作用V(r;ρ,α)をハイペロン毎に構成する。Λハイペロンについてはほぼ結果を得ており,現在Σについて計算を進行中である。Λは核子よりもずっと大きい有効質量をもつこと(mΛ^^*〜0.8,m,mN^^*〜0.6)等,G行列計算結果の分析は既に日本物理学会にて報告している(′98秋の分科会)。 (2)について: 現実的Λ-Λ相互作用を選び,また,(1)で得られたρ,α依存の現実的mΛ^^*を用いて,^1S_0対相関によるΛ-超流動を検討した。その結果,Λ-超流動は可能であること,中性子星の限定された密度域(ρ〜(2-4.5)ρ_0,ρ_0は核密度)で存在すること,を明らかにした(国際シンポジウム「Physics of Hadrons and Nuclei」'98.12.14-17於東京,及び,APCTPワークショップ「Strangeness Nuclear Physics」'99.2.19-23於ソウル,にて報告)。 (3)について: (1)の進行状況と連動しており,今年度前半期に遂行する計画である。
|