Research Abstract |
傾斜機能材料(FGM)中を伝播する超音波の数理解析は多くの応用技術を支える基盤となる.熱応力緩和型の傾斜機能材料はスペースプレーンの外壁に応用が予定されている.宇宙デブリ等の衝撃負荷に対するFGM材の動的強度や破損評価にはFGM内部を伝播する弾性応力波の挙動が基礎知識となる.また,作成(製造)されたFGM材の物性値(弾性係数や密度)評価に応用される超音波技術の基礎知識ともなる.従って,FGM材中を伝播する弾性波動の挙動解明は緊急の課題である. 本研究では,表面がセラミックス,内部がステンレスとなる2成分系傾斜機能材料を解析対象とした.セラミックスとステンレスに挟まれたこのFGM層の上下壁では物性値(弾性係数と密度)の変化勾配が零,すなわち連続的な物性変化を想定した三角関数的変化を仮定した.衝撃負荷を想定した高振動数負荷がセラミックス側に作用する場合について,波動伝播特性を詳細に検討した.得られた結論は以下のとうりである. (1) 面外SH波のみが生じる場合には,変位振幅の等高線は緩い楕円となり,波動エネルギーが表層に溜まることが示された. (2) 面内波,P/SV波が生じる面内変形状態では,セラミックス層の表面に生じた表面Rayleigh波が内部で遅いSV波と重なる時に,変位には特異性が生じることが発見された. (3) 特異変位場では,表面波の速度が速い領域側(表層側)で1位の特異性を示すが,遅い内部側では1位のゼロとなり,特異性が無い.このため,FGM層内で大きな変位変化が生じ,疲労や破壊の起因となることが危惧される.
|