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¥2,900,000 (Direct Cost: ¥2,900,000)
Fiscal Year 1998: ¥2,900,000 (Direct Cost: ¥2,900,000)
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Research Abstract |
本研究は結晶状態での分子特性を利用した新規反応の開発と解析を目的とした。結晶中の分子は運動が制限されており,トポケミカル則に従って反応するため溶液中とは異なる反応挙動を示す。その中で最も興味ある現象は,アキラルな基質の形成する不斉結晶のキラリティーだけを不斉源として用いる絶対不斉反応である。即ち,分子内に不斉源のないアキラルな気質の形成する結晶は,ほとんどの場合に対称心を持つ空間群で結晶化する。しかし希に,自然晶出によりP2_1やP2_12_12_1,P1などキラルな空間群で結晶化する場合がある。その不斉結晶のキラリティーのみを不斉源として利用し,アキラルな基質から光学活性物質を導く反応であり,生命の起源にも関連して興味持たれている。我々は新たに,アキラルな2-ベンゾイル安息香酸誘導体が他の有機化合物とは比較にならないほど高い割合で不斉結晶を形成する事を見いだした。このカルボン酸のチオエステル,エステル,アミド誘導体を合成し,その固相光反応により高い光学純度のフタリドが合成できた。本反応について置換基と不斉結晶との関係,温度や転化率と光学純度との関係,結晶構造解析,結晶中での反応機構解析など,詳細を明らかにした。 チオエステルは新規な1,4-アリル転移を伴う反応であり,エステルは結晶中でのラジカル対中間体を経由する反応であることを,絶対構造の決定などをもとに解明した。さらに,多くのX線構造解析の結果をもとに,結晶中におけるアリール基の転移反応に関する反応機構とジオメトリー解析にも成功した。またアミド誘導体は均一系では全く反応せず,結晶状態でのみ反応し,結晶状態を保持したまま,不斉誘導を伴う環化が進行することも見いだした。
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