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¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 1998: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
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Research Abstract |
Ti元素の結晶構造hcpとbccとを再現するボンドオーダーポテンシャルを作り,hcp-bcc変態で観察される界面の構造とエネルギーを求めることを本研究の最終的な目標としている.本年度は,精度の高い第一原理計算と,研究の見通しがつけやすいボンドオーダーポテンシャルを初めとする原子間ポテンシャルとをもちいて,フォノンを化学結合カから議論するための計算法の確立と実際の計算をおこなった.ターゲットとした系は,すでに第一原理計算でanharmonic effectがbccの安定性を支配するという結果が知られているZr[1]と同じIV族遷移金属の1である.(1) 第一原理計算による断熱ポテンシャル曲面 第一原理フルポテンシャルLMTO法プログラムを用いてHarris-Foulkes近似により,bcc-hcp達続変形に対するエネルギー平面上での断熱ポテンシャル曲面を計算した22種類の変形 λ1:bcc構造の(110)面をhcp基底面に変形するshear,λ2:bcc構造の(110)面をbcc[1-10]方向にスライドさせる(N点横フォノンモードに相当)を加えた.bcc構造はslideに対して強く不安定で,shearに対してもわずかに不安定なlocal maximumになっている.しかし,この結果はZrに対する計算結果と異なり,λ2軸方向では大きな変形に対してエネルギーが立ち上がっておらず,Zrとは違った変態機構を示唆している. (2) 有限温度効果を入れたシミュレーション結果 前述の第一原理計算で得られたポテンシャル曲面ではQuasi-harmonic近似が適用できないが,近似的なフォノン状態密度をリカージョン法で求めた.計算には第一原理計算で求められたポテンシャル曲面をbcc近傍で再現する経験的な原子挿入ポテンシャル(EAM)を用いている.この結果,振動に起因するエネルギーは変態温度でbcc相(-0.366eV/atom)がhcp相(-0.287eV/atom)に比べて極めて負に大きい.これはソフトブランチによる低周波でのピークに起因している. この大きな振動エネルギー項が高温でのbcc相の安定化を担っていると考えられる.Tiのbcc-hcp連続変形に対する基底状態での断熱ポテンシャル曲面は,Zrと決定的に異なっていることが第一原理計算で初めて明らかとなった.このポテンシャルを再現する原子間ポテンシャルは,強結合ポテンシャルに環境依存効果を入れる必要がある.また,基底状態の結果に基づいたQuasi-harmonic近似では有限温度でのフォノン分散を再現できないことが明らかとなった.
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