Research Abstract |
本研究では,「ソフトウェアの設計・開発時には適用範囲を設定できない処理対象をもつソフトウェア」の発展的な構成法を,その実現方式を含めて研究している. 平成9年度では,ソフトウェアの機能(仕様)を拡張させながら プログラムを、溝成する過程を追跡して,その結果,「細胞に基づくプログラミング(Poc)」の方針を打ち出した.細胞によるプログラミングでは,プログラムを.細胞の集まりで構成する.その特徴は,その前条件が満たされた時点で,自ら起動する能動細胞を導入していることである. 平成10年度では,実際にPocエディタを作成した.これは,単なるエディタ機能に加えて,細胞のグループを集めて1つのCプログラムに結合する機能も持っている.それを用いていくつかのプログラムを記述し問題点の検討と評価を行なった.その経験から,「能動形計算モデル」を提案した.能動形計算モデルは,前条件により能動的に起動する関数と,その起動を制御する部分とから構成されており,完全自律型関数と他から起動される受動型関数の中間的な性質をもつモデルである. Pocの効率的な実現機構については,動的結合機構や,再構成可能なハードウェア部分をもつコンピュータの構成を検討した.ソフトウエアが発展的に拡張していくためには,新しい概念の導入とそれを表す新しい言語に加えて,それらの実現を支援するコンピュータアーキテクチャの機構が有効になると考えて,ハードウェア/ソフトウェア協訓設計に関連する研究を進めた.また,Pocの能動細胞の特長だけを抽出して,能動形計算モデルを導入し、C言語に,ある条件によって自ら起動する能動関数の定義を追加した.それに基づいた,新しいアルゴリズムを考えるとともに,並列計算機によって複数の能動関数が並列に動作する状況を調べた. 今後は,能動形プログラムの言語プロセッサを開発して、手指動作の記述の解析,英文契約書の草案作成の支援などの実際の問題で,プログラムを発展的に溝成する方法を求めていく.これらは,いずれも,プログラムの仕様の拡張を余儀なくされる問題である.また,能動形プログラムの実行に適した新しいコンピュータアーキテクチャの検討を進める.このように,「発展するソフトウェア」を,変化するハードウェア/ソフトウェアの両面から研究を進めて行く.
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