Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 1998: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
|
Research Abstract |
エステル加水分解活性の異なる2種類の触媒抗体6D9,および9C10を研究対象とし、それらの安定同位体標識Fabを調製しNMR解析を行った.両抗体は反応速度解析の結果から、基質と遷移状態アナログ(TSA)に対する親和力の差が触媒活性を生み出す機構であることがわかっている.NMRより得られた構造情報を比較・解析することにより,触媒反応に必要な抗原結合部位の特性について考察した. 1)6D9の触媒活性発現に重要な残基であるHis27d(L)の側鎖NHのNMRシグナルを解析したところ,His27d(L)とTSAのリン酸エステルの酸素原子との間に水素結合が形成されていることが判明した.6D9と基質との結合,および9C10における基質・TSA結合の際は、水素結合の形成は観測されなかった.したがって、6D9では,基質とTSAのエステル部分の化学構造の識別にHiS27d(L)が、水素結合を通して主要な役割を果たしていると考えた. 2)基質とTSAはともに2個の芳香環を有するもののエステル部分の原子軌道は,それぞれsp2およびsp3と異なる.したがって、抗体に結合した状態では,基質とTSAでは反応中心を挟んだ2個の芳香環の相対配置が異なる立体構造をとる.NMR解析の結果,9C10結合状態では、TSAの4-((trifluoroacetyl)amino)phenyl)環の回転運動が抑制されるのに対し,nitorophenyl環の回転運動は抑制されていなかった.一方6D9においては、TSAの2個の芳香環の回転運動がともに抑制され,抗原認識において両芳香環がともに重要な役割を果たすことが明らかになった.これらの知見より、両芳香環をともに認識する6D9では,基質とTSAの立体構造の差を鋭敏に識別することにより親和力の差を生み出し,その結果,高い酵素活性を発揮すると考えた.
|