開殻系分子固体における電子スピン整列のメカニズムの研究
Project/Area Number |
10146212
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
武田 定 群馬大学, 工学部, 助教授 (00155011)
|
Project Period (FY) |
1998
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
|
Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 1998: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
|
Keywords | 有機強磁性体結晶 / 磁気的相互作用 / 電子スピン密度分布 / 水素結合性金属錯体 / 固体高分解能NMR / マジック角回転重水素核NMR / 水素結合 / プロトン移動 |
Research Abstract |
固体中における、水素結合と電子、格子、スピンとの相互作用に基づく現象の研究を行った。具体的には以下に示す点である。 1: π電子系と相互作用する水素結合を持つと考えられるサリチリデンアニリン系の物質におけるプロトン移動現象と、π電子系を介した二つのNHO水素結合同士の動的な相互作用を、液体ヘリウム温度領域までの固体高分解能15N-CP/MAS NMRなどにより明らかにした。この現象は、分子の一端の水素結合のOH型とNH型との動的変化という情報が、分子のもう一方の端にある水素結合に伝わるという情報伝達としても興味深い。 2: 水酸基やカルボキシル基などによる水素結合を持つ有機ラジカル分子で構成された有機強磁性固体などについて固体高分解能重水素核NMRにより結晶内におけるラジカル分子の各原子上の電子スピン密度分布を実験的に決定し、また分子軌道計算を併用して、ミクロスコピックな視点から磁気的局所構造や磁気的相互作用を明らかにした。特に水素結合を介した強磁性的相互作用のメカニズムを調べた。 3: 有機磁性分子の電子スピン密度分布に与える、π電子系へのヘテロ原子の導入の効果や、電荷移動錯体型の有機強磁性固体の磁気的局所構造などを、固体高分解能NMRによる実験や分子軌道計算により調べた。 4: 磁性金属イオンCu(II)をスピン源とする磁性固体における磁気的局所構造とミクロスコピックな視点から見た磁気的相互作用を明らかにした。特に水素結合性銅磁性化合物(ナトロカルサイト型物質:Cu2M(D3O2)(XO4)2,M=Na,K,Rb,X=S,Se)における磁気的相互作用と水素結合の役割を調べた。その結果、Cu(II)が作る1次元鎖内では強磁性的相互作用が働き、その大きさはO-H-OやCu-O距離と相関がある。また、Rbイオンを含むセレン酸塩では水素結合の同位体置換効果が磁気的相互作用に大きく寄与することから、磁気的相互作用に水素結合が大きく関与していることが分かった。また、Cu(II)の1次元鎖どうしを結ぶ水素結合中の水素原子に誘起される電子スピンがCu(II)イオンのそれと逆向きであることから、これら1次元鎖間には水素結合を介した強磁性的相互作用が働いていることが分かった。
|
Report
(1 results)
Research Products
(9 results)