Research Abstract |
金属多層膜は,積層効果と界面効果の発現により,優れた特性を発揮することが期待されている.本研究では,これら多層膜にブロチウムをドーブし,新物性の発現を目指して行った.本年度は,特に磁性と電気伝導性に着目し,水素化希土類薄膜をスペサ一層として2つの強磁性遷移金属薄膜で挟んだ3層膜の磁性と伝導性について調べた.今回はLa単層膜と水素化[Co/La/Co]3層膜の磁性と伝導性の実験結果について報告する. La(200nm)薄膜の電気抵抗測定による水素化の実験では,Ar雰囲気中に水素ガスを導入すると電気抵抗が上昇し,約7分後にピーク値をとり,その後減少した.抵抗の減少は徐々に緩やかになり,2時間後にはほぼ一定となった.水素化初期の電気抵抗の上昇は,水素がLa中に固溶し,αLa-H相が形成したためと考えられる. 3層膜の基本設計はcap-Cu(3nm)/Co(5nm)/X(3nm)/Co(10nm)/glassとし,スペーサ一層のXとして巨大磁気抵抗効果が出現するCu,未水素化La,6時間水素化したLaの3種類を用いた.水素化中の電気抵抗は,La膜の場合と異なり,水素ガス導入後から電気抵抗が上昇し始め,6時間後においても上昇傾向は続いた.比抵抗は水素化前より3%大きくなった.磁気抵抗効果の測定では,スペーサー層がCuの場合,室温で約0.8%の変化率が得られた.スペーサ一層がLaの場合,変化率,反転磁場ともCuの場合に較べて減少した,このことから,Co/La系はCo/Cu系と比較してGMR効果は小さく,層間交換結合も弱いと考えられる.スぺーサ一層のLaを水素化すると,変化率及び反転磁場は未水素化の試料に較べてさらに減少し,変化率に関しては符号が反対に変わった.変化率の減少は,水素化によりスペーサ一層のLaの電子状態が変化し,スピン依存散乱の割合が減少したためであると考えられる.符号の逆転は,Co層が持つ異方的磁気抵抗(AMR)効果と関係していると考えられる.
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