プロトオンコジーンfosBによる細胞増殖と細胞死の制御機構の解析
Project/Area Number |
10152245
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中別府 雄作 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30180350)
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Project Period (FY) |
1998
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
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Budget Amount *help |
¥4,000,000 (Direct Cost: ¥4,000,000)
Fiscal Year 1998: ¥4,000,000 (Direct Cost: ¥4,000,000)
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Keywords | 核内転写因子 / 細胞周期 / FosB / ΔFosB / アポトーシス / がん抑制遺伝子 / CDK2 / p53 |
Research Abstract |
細胞の増殖は正確な遺伝子発現のプログラムにしたがって進行すると考えられている。血清あるいは細胞増殖因子で休止期の細胞を刺激すると増殖因子レセプターに始まる一連のシグナル伝達系が活性化され、わずか数分以内に前初期遺伝子群の転写が一過性に活性化される。前初期遺伝子群の中でJun、Fos蛋白質は細胞をトランスフォームする能力を持つことから細胞の増殖制御、さらにがん化に重要な役割を担っていると考えられているが、細胞増殖の制御やがん化の過程でこれらの蛋白質がどのような役割を持つのか、未だ明らかにされていない。 研究代表者の中別府は、この問題解くために、jun、fosファミリーの中でfosB遺伝子に注目しその解析を進めている。fosB遺伝子は、スプライシングの違いにより2つの蛋白質、FosBとΔFosBをコードする。ΔFosBは転写活性化ドメインを含むFosBのカルボキシ末端領域(101アミノ酸残基)を欠き、FosBのアミノ末端領域とDNA結合ドメインのみからなる最も小さいFosファミリー蛋白質(237アミノ酸残基)である。 中別府は、これまでに、FosB、ΔFosBともに構成的な発現でRat1A細胞をがん化することを明らかにした。さらにΔFosBを休止期のRat1A細胞で発現させると、細胞は血清刺激時と同調的に増殖サイクルへ移行し、少なくとも1回のDNA複製、核分裂そして細胞分裂を進行させる。その過程で、サイクリンEとCDK2のmRNAが安定化される事を明らかにし、これが細胞周期の進行の原因と考えられた。しかし、このあと細胞はG1期に停止し、24時間前後で同調して細胞死に至る。一方、FosBを休止期のRat1A細胞で発現させた場合、非常にゆっくりとした増殖の活性化が見られ、次第にトランスフォームした形態へと変化するが、細胞死は顕著ではない。本年度は、FosBとΔFosBの発現細胞での細胞周期制御遺伝子(CDK2,CDC2)とp53癌抑制遺伝子の発現の違いを解析し、以下の結果を得た。 (1) FosB発現細胞では、FosB発現後細胞は細胞死に陥ることなく、数日のタイムコースでゆっくりとトランスフォーム形質を獲得していく。この過程ではCDK2、CDC2、p53ともに顕著な発現の変化は見られなかった。 (2) ΔFosB発現細胞では、ΔFosBの発現に伴い同調して細胞周期への移行が見られ、その際CDK2、CDC2mRNAレベルがG1/S期で一過性に増加した。その後、細胞分裂が一回完全に終了し、細胞は次のG1に入る。この段階でまたCDK2、CDC2のmRNAレベルの増加が観察された。さらに、p53mRNAレベルもG2/M期から増加し始め、次のG1期でも減少せずに蓄積的に増加することが明らかになった。ΔFosB発現細胞で観察された細胞死は、二回目のG1期停止の後12時間後から顕著になった。 ΔFosBが特異的に誘発する細胞死は、CDK2、CDC2、そしてp53蛋白質発現のいずれかによって制御されている可能性が示唆されたので、現在、 (1)CDK2、CDC2の特異的な阻害剤を用いてこの細胞死が抑制されるか否か?(2)ΔFosB発現による細胞死に抵抗性となったトランスフォーム細胞においてp53遺伝子の変異が生じている可能性の検討を進めている。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)
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[Publications] Hazell,A.S., McGahan,L., Tetzlaf,W., Bedard,A.M., Robertson,G.S., Nakabeppu,Y., and Hakim,A.M.: "Immediate-Early Gene Expression in the Brain of the Thiamine Deficient Rat." J.Molec.Neurosci.10・1. 1-15 (1998)
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[Publications] Ohtsubo,T., Matsuda,O., Iba,K., Terashima,I., Sekiguchi,M., and Nakabeppu,Y.: "Molecular cloming of AtMMH,an Arabidopsis thaliana ortholog of the Escherichia coli mutM gene and analysis of functional domain of its product." Mol.Gen.Genet.259. 577-590 (1998)
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[Publications] Hayakawa,H., Hofer,A., Thelander,L., Kitajima,S., Cai Y., Oshiro,S., Yakushiji,Y., Nakabeppu,Y., Kuwano,M.and Sekiguchi,M.: "Metabolic Fate of Oxideized Guanine Ribonucleotides in Mammalian Cells." Biochemistry. in press. (1999)
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[Publications] Nishioka,K., Ohtsubo,T., Oda,H., Fujiwara,T., Kang,D., Sugimachi,K.,and Nakabeppu,Y.: "Expression and differential intracellular localization of two major forms of human 8-oxoguanine DNA glycosylase encoded by alternatively spliced OGGI mRNAs." Mol.Biol.Cell.in press. (1999)
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