Research Abstract |
刺激属性としての時間情報を覚え処理する際にも,個々のニューロンの発火頻度に基づくコーディングと,ニューロン間の活動相関に基づくセル・アセンブリによるコーディングとが協力した,いわゆるデュアル・コーディングが行われているか否かについて実験的に検討した。動物,記憶課題,記録方法は,昨年報告したとおりであり,今回は最終的な解析結果を報告する。 1. 個々のニューロンの機能重複について 海馬体CA1とCA3のcomplex spikeニューロン計81個について,各記憶課題遂行中の活動を解析した。各課題でのラットの弁別的行動と対応した差異的活動を示したニューロンを,その課題に関わるニューロンと判定した。その結果,刺激弁別課題にのみに関わるニューロンと,刺激弁別課題と提示時間弁別課題に重複して関わるニューロンは見つかったが,提示時間弁別課題にのみ関わるニューロンは無かった。この結果は,Sakurai(1996)同様,重複部分を持つセル・アセンブリが課題の種類をコードしている可能性を示している。しかも,それらは互いに重複しているのではなく,刺激弁別課題をコードするセル・アセンブリが提示時間弁別課題をコードするセル・アセンブリを内包していることも示唆している。 2. ニューロン間の機能的シナプス結合の変化について もしそのようなセル・アセンブリが各記憶課題をコードしているのなら,それぞれの課題を行っている時のみ,その課題をコードするセル・アセンブリに属するニューロン間には,機能的シナプス結合に基づく活動相関が見られるはずである。そこで,課題遂行中に同時記録したニューロン間の活動相関を,Sakurai(1996)と同様の相互相関解析法により調べた。その結果,解析した31のニューロンペアのうち,上記の仮説を支持する事例が有意に多く見つかった。
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