Research Abstract |
マラリアワクチン開発で,最も障害となっているのがアジュバントの問題である.動物実験等で,防御効果が確認されている抗原を,実際にヒトに投与するには,安全性と有効性を兼ね備えたアジュバントが必要であるが,未だ十分なものが無い.我々は熱帯医学研究所神原廣二教授との共同研究で,組み換えBCGのシステムを用いて,マウスを用いた赤内型マラリア原虫感染防御に成功し,その防御機構が,細胞性免疫をベースにした防御抗体産生誘導であることを,数年にわたる解析の結果,明らかにし,本年発表した(J.Exp.Med.,1998).さらに,BCGシステムを,ヒトに応用するため,熱帯熱マラリアの防御抗原SERAをα抗原をキャリアーとしてBCGから発現させることを試みた.SERAをコードする合成遺伝子をα抗原遺伝子の様々な場所に挿入し,合計7種類の組み換えBCGを作製した.それらを,試験管内で培養し,分泌抗原中の蛋白質を解析してきたが,現在までの所,十分量のSERA抗原を発現する,組み換えBCG菌は得られていない.この原因は,1;発現させるのにSERAの分子量が大きすぎる,2;SERA抗原の一定部位が分泌に適さない(不溶体を形成する),3;使用コドンの不適合,4;プロモーター活性が低い等の原因が考えられた.現在1,2の原因を解決すべく,SERA遺伝子を分割して,発現させることを試みている.また,α抗原以外のキャリアー蛋白質の検討を行い,抗体産生能の高いMDP1等の抗原とSERAの融合蛋白質を発現させる,プラスミッドを構築している.
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