Research Abstract |
真核細胞mRNAキャップ構造は,転写の極めて初期に形成され,その後のmRNA代謝や翻訳において重要なシグナルとして機能する.我々は,種々の生物ならびにウイルスのmRNAキャッピング機構について,酵素化学的ならびに分子遺伝学的手法を用いて解析している.これまでに我々は,酵母S.cerevisiaeのキャッピング酵素αサブユニット(mRNAグアニル酸転移酵素)遺伝子(CEG1)およびβサブユニット(RNA5'-トリホスファターゼ)遺伝子(CET1)のクローニングを行い,これらが酵母の生育にとって必須の遺伝子であることを示し,それぞれの機能部位について解析してきた(J.Biochem.118,1033,1995;BBRC239115,1997).今年度は,ヒトmRNAキャッピング酵素遺伝子(hCAP1)の単離を行い,組換え変異タンパク質の解析から,それがN末側にRNA5'-トリホスファターゼドメインを,C末側にmRNAグアニル酸転移酵素ドメインをもつ多機能酵素であることを証明した(BBRC243,101,1998).さらに,ヒトmRNAキャップメチル化酵素,mRNA(グアニン-7-)メチル基転移酵素の遺伝子(hCMT1)をクローニングし,同酵素の構造・機能相関について解析した(BBRC251,27,1998).また,hCAP1とhCMT1からはいずれも,選択的スプライシングにより少なくとも2種類のタンパク質が細胞内で発現していることが示唆された.polII転写開始複合体を活性状態で分離し,その中にmRNAキャッピング酵素およびmRNA(グアニン-7-)メチル基転移酵素が特異的に含まれていることを,それぞれの酵素に対する特異的抗体を用いて明らかにした.ウイルスmRNAキャッピングについては,センダイウイルスとインフルエンザウイルスについて検討した.センダイウイルスmRNAのin vitro合成はほぼ完全に宿主因子の存在に依存する.宿主因子を高度に精製し,それが3つの成分からなることを明らかにした.インフルエンザウイルスmRNAのキャップ構造は宿主mRNA断片を利用することによって付加される.とくに,この反応に関与するウイルスポリメラーゼPB2サブユニットについて,宿主キャップ構造の認識部位のマッピングを種々のモノクローナル抗体を利用して行った(Virology,in press).
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