Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (B)
単一微粒子のレーザー捕捉・顕微分光・電気化学測定法を駆使して、単一液滴の反応や現象のサイズ依存性を探索するとともに、その原因の解明を目的として研究を行った。油水エマルション系および単一油滴における芳香族炭化水素の光シアノ化反応:油水エマルション系における微小油滴/水界面を経た物質移動を利用し、芳香族炭化水素と電子受容体との間の光誘起電子移動を経由した芳香族炭化水素の効率的な光シアノ化反応を見出した。例えば、ベンゾニトリル:水=1:100の油水エマルションにおいてピレンの光反応を行った場合、油滴中におけるピレンカチオンラジカルの生成と水中への分配、さらに水相における青酸イオンとの反応によって1-シアノピレンが収率=80%で生成することを明らかにした。ピレンの他に、フェナンスレン、ナフタレン、N-エチルカルバゾール、1,10-フェナントロリン、ペリレンなどの様々な芳香族炭化水素や含窒素芳香族化合物がシアノ化されることを確認した。また、ピレンの系においてシアノ化収率に対する油水エマルションの回転撹拌数依存性を検討したところ、回転数の増大とともに収率は向上し、油滴サイズ依存性が示唆された。そこで、ペリレンの光シアノ化反応を例として単一油滴毎の測定を試みた。単一油滴をレーザー捕捉しながら、キセノン光を照射して光反応を行い、反応の進行を顕微蛍光法により追跡した。光照射とともにペリレンの蛍光強度は減少し、それにつれて1-シアノペリレンの蛍光が新たに現われた。これをスペクトル分解することにより、ペリレンの消費速度と1-シアノペリレンの生成速度を油滴毎に見積もった。その結果、消費速度、生成速度ともに油滴サイズの減少とともに速くなり、油滴サイズ依存性が確認できた。反応においてはカチオンラジカルの水中への分配が含まれることから、油滴サイズの減少により表面積/体積比が増大し、これを反映してサイズ依存性が現われるものと考えられる。本研究を通して、新たな反応と油滴サイズ依存性を見出すことができた。
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