Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
本研究は近年増えつつある糖尿病性合併症・動脈硬化の発症に深く関与する血管平滑筋細胞の形質転換と増殖の分子機構を明らかにすることを目的としている。我々は血管平滑筋細胞におけるインスリン/IGF-1情報伝達系をPI3-キナーゼとその下流に存在するAktに焦点を絞り研究を進めている。その手法としてdominant-negativeに作用するmutantを作製し、細胞内に導入している。今年度我々は変異PI3-キナーゼとAktを作製し、これをアデノウイルスベクターに組み込むことに成功した。さらにこのウイルスをラット大動脈より樹立した培養平滑筋細胞に遺伝子導入すると、高い効率で変異蛋白が発現されることも確認された。現在、ウイルスを感染させた血管平滑筋細胞を用いてPI3-キナーゼ、Akt、ribosomal S6キナーゼ活性を測定するとともに、DNA-合成も測定し、変異PI3-キナーゼとAktが血管平滑筋細胞においてdominant-negativeに作用することを確認している。今後、Akt及びPI3-キナーゼのRas/MAPキナーゼ系に対する作用の解析、すなわちクロストークについてもこのシステムを用いて検討を加えて行く予定である。さらに来年度は慢性的なインスリンやIGF-1刺激、および高血糖刺激下において変異PI3-キナーゼやAktを導入した血管平滑筋細胞のシグナル伝達や細胞増殖がどのように影響されるか解析し、動脈硬化の抑制目的にこれらの変異遺伝子の導入が有効であるかについても検討加えて行くことにしている。