Research Abstract |
平成10年度に行われたプレ・テスト,および実験結果からは,子ども版腹式呼吸法,子ども版漸進的筋弛緩法,イメージトレーニングなどから編成される訓練型プログラムには,プログラムを実施する教員の指導力によって効果に違いがある,幼児の社会性発達の程度によってプログラムの適用には限界があるなどの問題点が示唆された。そこで,本年度は,ストレスからの回復力(レジリエンス)の育成に主眼をおき,幼児自らがストレス・マネジメントを学習する環境づくりを検討した。レジリエンスとは,逆境に直面し,それを克服し,その経験によって強化される,また変容される普遍的な人の許容力であり(Grotberg,1999),ソーシャル・サポートのような環境要因を,子どもが備えた媒介要因の一部分であるとする,従来の国内には見られなかったストレス研究への視点である。この視点から,環境要因として,母親-子どもの関係,保育者-子どもの関係,母親-保育者の関係が子どもの日常的なストレス反応に与える影響を分析する必要性が見い出された。そこで,Hiew & Grotberg(1998)によって開発された大学生を対象とするSRC(State-Resilience Scale)を用いてレジリエンス測定を試み,子どものストレス反応,および母親のストレス強度との関連の検討を行った。その結果,4歳では,ストレス反応における「幼稚園関連問題」との間に,5歳では「引きこもり・消極性」,「人前での緊張」,「幼稚園問題」との間にレジリエンスとの強い相関が認められた。また,レジリエンス項目における「愛想が良くなつきやすい」には母親のストレス強度による差が認められた。しかし,全般的に見れば,幼児期の日常的なストレス反応項目とレジリエンス尺度項目は,年齢別に作成される必要があり,そのためのサンプル数を十分に確保することの重要性が示された。
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