Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本研究の目的は、日本語を母語とする児童とそうでない児童が混在する多文化状況における、生活・学習集団の編成様式および生活・学習集団間/内の人間関係を調査し、教師と児童が、児童館にある「差異」をどのように認識し、それが児童の人間関係の形成にどのように影響を与えているのかを検討することにある。調査対象として、全国的にも日本語を母語としない児童の在籍数の高い群馬県邑楽郡大泉町Z小学校を選び、平成10年6月より平成12年3月まで週1〜2日の割合でエスノグラフィックな調査を実施した。調査の結果、一般の教室では「排斥」の対称になる傾向にある児童の「差異」が、Z小学校の興味別集団を編成・活用した総合的な学習活動では、しばしば活用すべき資源として学習集団に「統合」されることが判明した。また、Z小学校では外国籍児童の日本語能力や適応の問題と同様に、日本籍児童の間にも被差別部落や家庭環境などのさまざまな問題が存在するが、教師は、前者が身体的にも行動様式においても「目に見える」問題として顕在化しやすいがゆえに指導がしやすく、逆に後者の問題への指導はしにくいと考えていることがわかった。さらに、国籍、身体的特徴、生活習慣を根拠に集団関係を操作する行為は、日本語を母語としない児童とそうでない児童の間だけではなく、日本語を母語としない児童の間にも観察された。以上のことから、多文化状況にある学級集団は、差異に対する「まなざし」の教育実践の開発が新たな課題として抽出された。
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