Project/Area Number |
10710170
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Asian history
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
青木 敦 岡山大学, 文学部, 講師 (90272492)
|
Project Period (FY) |
1998 – 1999
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 1999)
|
Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 1999: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 1998: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
|
Keywords | 裁判 / 訴訟 / 中国 / 宋 / 法治 / 江西 / 地域 / 人口 / アジア / 法制 / 制裁 / 官僚制 / 監察 |
Research Abstract |
本研究の研究目的は、依然として「法治」よりも「人治」が優先される現代中国の現状を考え、この「法治」と「人治」の関係を歴史的に考察することにあった。具体的には官僚犯罪への対応を中心として、中国法制史研究で扱われてきた清代の法社会モデルが、他の時期にも適用できるのか否かを、宋との比較において検討することが研究課題だった。 本研究では、海外特にアメリカにおける清代法制史研究の動向調査、および東京大学東洋文化研究所所蔵の大木文庫を利用した官僚犯罪対策の考察を行ったが、その結果、次に述べる2つの結果が得られた。 (1)南宋では越訴(直訴)の対象となる官僚の犯罪行為が勅令に具体的に記されていたのに対し、清代では具体的判決基準となる法律が乏しかったことが見出された。官僚犯罪への対処において、宋代では清代的な法律運用の暖味さ・「人治」の通用する余地が小さく、裁判における法運用の実態にも差異が見られたことは、従来の清代モデル偏重への再考を求める結果となった(越訴に関する論文で発表)。 (2)さらに、地方志等に見られる健診(訴訟好き)認識の分析から、南宋の法律重視の裁判には地域差が存在することが発見された。具体的には11-13世紀の江西でその傾向が強く、その背景として同地域への人口流入による地面上昇・モラルエコノミーの崩壊が想定されることも明らかとなった(健訟に関する論文で発表)。 以上の宋〜清代の官僚犯罪と法典・裁判に関する研究結果から、南宋では、質的用達とは言えないまでも、傾向として法律重視が強く、そこには地域差が伴っており、清代モデルの安易な適用は不適当であることが明らかとなり、中国的「法治」の時期・地域による差異を指摘しようとする当初の研究目的が達成された。今後は、官僚犯罪以外の面での宋制の性格付け、地域差の再検討、更には法制資料に立脚する秩序論と現実の地域社会の関連を具体的事例に即して明らかにして行くことが課題となってくる。
|