近現代英米文学における南太平洋異文化表象の思想史的研究
Project/Area Number |
10710231
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
英語・英米文学
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
新井 英永 熊本大学, 文学部, 助教授 (00212598)
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Project Period (FY) |
1998 – 1999
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1999)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1999: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | O.H.ロレンス / ウィルフレッド・トロッター / オーストラリア / 社会ダーウィン主義 / 優生学 / 群衆 / 第一次大戦 / D.H.ロレンス / ドゥルーズ=ガタリ / 旅 / 脱領土化 / 再領土化 |
Research Abstract |
20世紀モダニズム文学・思想のオーストラリア表象において重要な位置を占めるD.Hロレンス(1885-1930)の『カンガルー』(1923)は、ロレンスのオーストラリア滞在中の社会的状況並びに伝記的事実の発掘により再評価されつつある。こうした伝記・歴史的事実研究の一層の深まりが期待されることは言うまでもないが、オーストラリアの歴史社会状況と『カンガルー』を対応させただけでは抜け落ちてしまう過剰な要素は、例えば当時のイギリスにおける優生学や社会心理学、形而上の言説との関連で明らかにされる必要がある。 この観点から本年度は、『カンガルー』における群集あるいは集団の概念・表像の意味と機能を、イギリスの生理学・社会心理学者ウィルフレッド・ドロッター(1872-1939)の『平和と戦争における群れの諸本能』(1916;1919)との比較を中心として明らかにすることを試みた。その成果は論文にまとめ、熊本大学文学会『文学部論叢』第69号歴史学編(2000年3月)に寄稿した。 トロッターの社会ダーウィン主義的言説は、カール・ピアソンとベンジャミン・キッドの中間あるいは後者の近くに位置づけることが妥当である。それに対して、『カンガルー』におけるロレンスの群衆に関する言説は、社会ダーウィン主義・優生学の言説から逸脱する傾向が強く、人類の群居動物化に激しい嫌悪感間を抱いたフリードリヒ・ニーチェや、優生学的社会再編成のに抵抗したジグムント・フロイトの言説にむしろ類似していると思われる。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)