Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1998: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
|
Research Abstract |
本研究では当初の研究計画に従って,初年度には個体群動態を表す拡散方程式の解析手法の整備を行い,2年度目にはそれを具体的な状況に適用し,変動環境下での個体群管理のあり方について数理モデルに基づく解析を行った.特に,個体群の大きさを臨界値以下に抑えるために,個体群が臨界個体数に達した時に一定の個体を間引きするような管理方策について理論的検討を行った. 大形草食獣などは,個体数が多くなると生息地の植生に対する食害などを引き起こして,その地域の群集構造に大きな影響を及ぼす場合がある.それを抑止する一つの方法として,個体数が臨界値に達した時に一定の個体数を間引きして個体数を一時的に減少させることが考えられる.その方策では,間引き個体数を増やすことで人為的な管理の周期を長くすることもできるが,そういった大量の間引きは,個体群が環境変動の影響によって絶滅する確率を高めることにもなる.このようなトレードオフは,野生生物の管理上,重大な問題である.そこで,上記のような間引き管理の下での個体群の絶滅確率とその管理の経済的な有効性を検討した.個体数の確率分布の変化を拡散方程式で記述することにより絶滅までの待ち時間を明確に定式化することに成功し,それに基づいて以下のようなことが示された.個体数をコントロールする際のコストが間引きする規模に依存しない場合,個体群の絶滅確率の減少を目指すことに伴って管理のための支出が急激に増大する傾向がある.それに対し,コントロールのコストが間引きの規模によって決まる場合,支出は絶滅確率の減少にともなって比較的ゆるやかに増加する.そのため,コントロールに伴うコストのかかり方によって,保全と経済性の妥協点のあり方が異なってくる. 本研究の成果は,具体的な野生生物管理のあり方にも大きな指針を与えるものである.この取り組みは投稿論文として既にTheoretical Population Biology誌に受理されており,同誌に近日中に掲載される予定である.
|