Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本年度における研究目的は、農協における高齢者福祉活動の評価方法を確立し、事例分析により現在までの活動の評価を行い、高齢者福祉活動モデルの作成を行うことであった。評価方法として、施設等のハード面は法律等で規定されている部分が多いため、同活動の評価は主に人材やソフト面に重点をおかざるを得ない。その評価は非常に困難であるが、農協に業務を委託している市町村での聞き取り調査によれば、常勤看護婦がいない、組合員組織があるにも係わらずホームヘルプサービスを供給していない等の問題点が指摘された。とはいえ、地域密着という農協の特徴を生かした運営により、組合員や地域住民、行政からの信頼度は高いように思われる。事業採算性の面からは、民間の社会福祉法人が特別養護老人ホームをはじめとした各種事業に取り組み、行政の補助を受けながらも規模の経済性、範囲の経済性を追求しているのに対し、既存の農協の高齢者福祉活動はノウハウや資本等の制約から、規模の経済性や範囲の経済性を発揮できておらず、持分を持ち出している状況にある。また、信頼度の向上が他事業に直接的、間接的波及効果を及ぼすまでには至っていない。そのため、地域により状況は大いに異なるであろうが、相対的に事業化が容易で、投資負担の少ないデイサービス事業等への取り組みが、現状では農協にとって無難な選択と考えられよう。なお、本研究中は介護サービス利用料が不明であったので、今後利用料が確定した段階で採算面について再度検討する必要がある。