Research Abstract |
本研究の目的は、動物で実験的に再植した幼若永久歯の経時的な歯冠色変化と歯髄組織所見を対応させることにより、歯冠色から歯髄生死判断が可能かどうかを検討することである。また歯冠色の経時的記録にデジタルカードカメラを使用しコンピューターでのデータ管理をスムーズに行えるようにした。当初は動物実験はビーグル犬の上顎永久切歯(単根歯)で行う計画であったが、費用・実験期間が縮小したことにあわせて、ラットの上顎臼歯(複根歯)に変更した。4週齢雄性Wistar系ラットの右側上顎第一臼歯を被験歯とし、無処置の反対側同名歯をコントロールとした。実験歯の付着歯肉をエキスカで断裂後、抜歯鉗子で完全脱臼させ直ちに再植。再植後1,3,5,7,14,28,60,90日に潅流固定を行い組織標本を作製した。デジタルカメラで経時的に歯冠色記録を採取した(歯科臨床で行われている撮影と同様に行った)が、対照歯においてもばらつきが大きく満足のいく結果は得られなかった。その原因は撮影条件(光源の種類,被写体・カメラ・光源の三者の位置関係など)を厳密に規定しなかったためかもしれない。被験歯が近遠心径が3mm程度と小さい上に多咬頭歯であり、また臼歯であるため口腔内での位置が後方であるため、接写用レンズを装着したデジタルカメラ(重量は2kgを超える)での撮影は困難であった。一方、組織所見は5-7日目以降は(1)歯髄組織が再生し修復象牙質形成が起こる場合、(2)歯髄組織が骨組織を含む線維性結合組織に置換する場合、(3)炎症性細胞が多数浸潤し正常の歯髄組織がほとんど認められない場合の三通りかそれぞれ同程度の頻度で認められたが、(1)(2)はともに歯髄組織が再生(断裂した神経と血行が回復)した状態であり、(3)が歯髄壊死に相当する。なお組織像が(3)の所見を示した被験歯は、肉眼的には7日目項より歯冠色の暗色化が認められることが多かった。
|