Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
競歩競技の研究は技術、指導法それぞれに関する研究がいくつかみられるが、「歩」を学習することが「走」にどのような影響を及ぼすかに関する関係に研究はほとんどみられない。そこで学校教育における「歩」の指導法に関する基礎的知見が得られれば、今後の学校教育において正しい「歩」の指導が行うことができ、また、正しい「歩」の指導が正しい「走」の指導に役立つものと考え本研究を行った。実験は大学生10名を対象に、プレテストにおいて60mのウォーキングをした後60m走を行った。週5回、1回10分の頻度で、2週間ウォーキング指導を行った後、ポストテストにおいてプレテストと同じ試技を行った。それぞれの試技において、デジタルビデオカメラにて、スタート地点から50mの地点の動きを二次元撮影し、フレームレコーダーとパソコンにてdigitaizingした後に、ストライド、ピッチ、身体の重心速度及び下肢の関節角度について解析を行った。実験の結果、プレテストでは50m地点のウォーキングタイムが11.605秒、疾走タイムが6.968秒を示した。また、ポストテストでは、50m地点のウォーキングタイムが11.821秒、疾走タイムが6.828秒を示した。プレテスト及びポストテストの50m地点の疾走タイムの間には5%水準の有意差がみられた。以上の結果から、ウォーキングの学習をすると、歩きは遅くなるが、疾走タイムは速くなることが示唆された。本実験において、ウォーキングの学習をすることによって、正確な歩き方及び身体重心のスムーズな移動が収得されたと思われる。従来、児童・生徒が短距離走を学習する場合、速い動きのため、ブレーキの少ない脚の接地をなかなか収得しづらい傾向があったと思われる。今回の研究により、ブレーキの少ない脚の接地を収得するために、ウォーキングの学習が有効であることが示唆されたといえよう。今後は歩の学習内容をさらに発展させるべく、より有効なカリキュラムを開発するための研究を試みたい。