Research Abstract |
本年度は低次中心地における公共的サービス供給の変化と人口変化との関係について明らかにした。本研究によって得られた新たな知見は以下の通りである。 1.低次中心地におけるサービス供給の数量的変化 市場メカニズムにのりにくい教育,医療,文化施設,交通などの供給状況を数量的に把握した。具体的には,国や県が主体となって行った調査資料や職業別電話帳などを用いて,中国地方5県に立地する低次中心地の公共施設(教育,医療・福祉,文化施設)の立地件数,立地年次,分布状況などを明らかにした。この結果,近年に近づくにつれ,低次中心地への公共施設の立地は増加していることが明らかになった。一方で,教育機関を中心として公共施設の廃止もみられた。また,低次中心地の中でも公共施設の立地は役場集落への集中化が進み,旧町村役場所在地であった中心地は相対的にその機能を低下させていることをつきとめた。 2.公共的サービス供給と中心性との比較 1で明らかとなった公共的サービス供給の地域的差異と人口変化,中心性,民間事業所の集積度などとの対比を行った。この結果,公共的サービスは市町村を単位として一律的に行われているのに対して,人口集積度や中心性の変化は地帯的に構造をなし,両者の関係が必ずしも密接であるとはいえないことが明らかになった。 3.島根県における低次中心地を中心とした集落システムの実態把握と地図化 デジタルデータの地形図とGISソフトを用い,低次中心地周辺における集落の社会・経済的データを地図上に示し,集落システムの実態把握に努めた。この結果,低次中心地から遠距離にある集落と低次中心地の内部において人口減少率が高いことが明らかになった。
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