Research Abstract |
今年度は,スウェーデン教育庁の教育史担当者,福祉関連の教育プログラム担当者と継続的にやりとりを行いながら,スウェーデン基礎学校(小・中学校段階)の福祉教育に関わる歴史的資料(学習指導要領,教科書,教育改革の過程に関する資料)の収集,分析,検討を進めてきた。 基礎学校の前学習指導要領(1980年)では,福祉問題を含む,人類の生存にかかわる重大問題に関する学習が強く望まれ総合的に位置づけられているが,クラスや異年齢グループで,多様な生き方や社会問題・生活問題を検討することを通して,社会システムの問題や子どもの権利の学習が行われている。 現在,わが国では,「総合的な学習の時間」への取り組みをはじめとして,福祉学習の実践が多数報告されるようになっているため,今後さらに,長期計画的に福祉社会を目指してきたスウェーデンの福祉教育についての実践的研究を進め,どのような学びが創り出され,何が議論されてきたのかを詳細に分析することを通して,日本の現代社会における福祉教育を相対化したいと考えている。 スウェーデンでは,福祉教育改革の過程で,1980年代より指導資料や教材,テキストなどが多く作成され,福祉教育の指導方法を少人数の教師が検討しあうプロジェクトが行われてきている。今後は,それら福祉教育改革の過程における授業研究,授業実践の分析を通じて,福祉教育の総合的な学習の可能性やその方策を検討したい。 また特に,家庭科における青少年の問題,家族問題,高齢者,障害者の問題の学習については,イェテボリィ(スウェーデン南西部の都市)地域で継続的な実践が行われていることから,今後,その実践にも注目していきたいと考えている。
|