Research Abstract |
知的教育支援システム研究分野では,計算機上に構築された仮想実験環境内での挙動シミュレーションを用いて,様々な物理概念を説明する機能の実現が,近年の重要な課題となっている.本研究の目的は,学習者が誤った物理概念を有する場合に,その発見・修正を支援するシミュレーションの生成・提示の枠組みの提案である. 第1年度は,学習者の誤りを反映した挙動シミュレーションの生成法を提案・実装し,シミユレ一ション上のおかしな動きが予想と異なるとき,誤りへの気づきが生起することを確認した.シミュレータの設計においては提示された現象が予想される現象と「速度」において定性差を持つ場合に差異を認識できるという条件を仮定しこれに基づいて可視化効果を診断する機能を実現した.定性推論機構(QSlM)による自動化が実現されている. 第2年度は,シミュレータの扱える誤りの範囲を拡大するため,提示された現象と予想される現象との定性差が「速度」のみならず「速度の変化率」の場合にも効果的であると仮定し,可視化効果の診断機能を拡張した.定生推論機構(DQ解析)による自動化が実現されている.また,可視化効果の診断条件を検証するための認知実験を,専用に設計されたシミユレータを用いて行い,仮説を裏付ける結果を得た. 設計・構築されたシミュレーション制御システムは,人間の観察者による検証実験により,その効果が確認された.本研究により,シミュレーションを用いた仮想実験環境の,教育効果を考慮した運用法に関する指針が得られたと考える.また,人間の運動視に関する,有益な認知的知見も得られた.研究成果は,別掲の雑誌掲載論文,国際会議発表論文などにより公表されている.
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