Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
すべての生物は自身の遺伝情報を複製し、細胞を分裂することにより形成される。従って、遺伝子複製の機構を明らかにすることは、いろいろな生命現象を理解していく上で、重要な課題である。私は真核生物の中で最も単純な生物である酵母をモデルとして、遺伝子複製機構の解析を進めている。出芽酵母では染色体複製にDNAポリメラーゼα、δおよびεという少なくとも3種類のDNAポリメラーゼが必須であることがわかっている。このうち、DNAポリメラーゼδに関しては完全精製は成功しておらず、125kDaと55kDaのサブユニットをコードするPOL3(CDC2)遺伝子とHYS2遺伝子がクローニングされているのみであり、未だその詳細なサブユニット構造は解明されていない。従って、その機能の解明も遅れている。本研究は、DNAポリメラーゼδの新たなサブユニットや補助因子をコードする遺伝子を単離、解析し、サブユニット構造を明らかにすると共に、染色体複製におけるDNAポリメラーゼδの役割をより詳細に解明することを目的として行ってきた。まず、DNAポリメラーゼδの新たなサブユニットや補助因子をコードする遺伝子を単離するために、2番目のサブユニットであるHys2の温度感受性変異株であるhys2-2の温度感受性を多コピーで抑圧する遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、HYS2以外に、触媒サブユニットをコードするCDC2と新規因子をコードする遺伝子(YJR043c)の2種類のクローンが得られた。この新規因子の変異株や抗体を作製し遺伝学的、生化学的解析を行った結果、この因子はDNAポリメラーゼδの3番目のサブユニットであることがわかった。現在はYJR043cのDNA合成における役割を解析中である。