Research Abstract |
本研究では,主として有機物質の液体や溶液から固体表面(とくにグラファイト表面)への吸着によって液固界面に出現する新奇な単分子膜を対象とする.バルク凝縮相に埋もれた単分子膜レベルの凝縮相について,非干渉性の弾性中性子散乱および干渉性の中性子回折を適用することによって一連の有機物質について系統的な実験的研究を行うのが目的である. 現時点までの研究の進捗は極めて良好で,(1)類似物質から成る2成分系の単分子膜レベルでの相図の作成,(2)直鎖アルカン単分子膜における顕著な偶奇効果の発見,(3)界面近傍のバルク固体における特異な相の安定化など新規な結果が続出し,数編の論文として報告することができた. 中性子実験は,今年度も国内では高エネルギー加速器研究機構を中心として,海外ではラウエランジュバン研究所(フランス・グルノーブル)を中心として共同利用により実施した.これらはいずれも,オックスフォード大学のグループ,およびケンブリッジ大学のフループとの国際共同研究に発展している. 本研究を発展させたかたちで,同じ系に対して分子動力学計算によるシミュレーションを始めたが,それについても期待できる結果がすでに出はじめている.今後は,熱測定,X線回折,中性子実験,分子動力学シミュレーションを有機的,相補的に用いた研究に発展させたいと考えている.本研究によってその芽が出たことは申請者のこの上ない喜びである.
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